イチローが、ダルビッシュを打ち砕いた。マーリンズのイチロー外野手(43)が、レンジャーズ戦に「6番右翼」で出場し、3年ぶりに対決したレ軍ダルビッシュ有投手(30)から適時二塁打を放つなど、3打数2安打1打点3四球と活躍。マ軍の球団新記録となる22得点の大勝劇を演出した。

 イチローが、ダルビッシュ攻略の口火を切った。2-1と1点リードで迎えた4回表無死一、三塁。カウント2-2からのスライダーを右中間へ運んだ。ワンバウンドでレ軍ブルペンに飛び込むエンタイトル二塁打で1点を追加。打者一巡、一挙9点のビッグイニングにつなげた。14年以来3年ぶりの直接対決。だが、イチローに「日本人対決」の感傷はなかった。

 「そんな余裕はないね、僕に。たまにしかない先発ですから(笑い)。ダルとの勝負が楽しみという精神状態ではない。それはないです」

 ただ、右肘手術を乗り越えた後輩を頼もしく見つめてもいた。「やっぱりダルが来るということは、心構え、心の持ちようが全然違う。トップ中のトップ。例えばシャーザー(ナショナルズ)ストラスバーグ(同)カーショー(ドジャース)とか…。そういうレベルの投手。ただプレーすればいいという感覚にはならない。それなりの覚悟が必要な投手だね」。そんな絶対的エースを早期KOし、試合はマ軍の一方的な展開となった。

 21-8とアメリカンフットボールのようなスコアになった9回表の第6打席では、捕手ニコラスと対戦した。自ら投手として登板したことはあっても、日米通算26年目で野手と対戦するのは初めてだった。カウント0-2からの1球は時速45マイル(約72キロ)の山なりの超スローボール。タイミングを合わせるため、数回リズムを取り、少し後ろに下がるようにしながら遊撃後方への安打とした。「どうやって距離をとるか。球は遅いから考える時間はあるからね。もうあれしか、方法はなかった」と、苦笑交じりに振り返った。

 終わってみれば球団新となる22得点。ダルビッシュだけでなく、野手の投手と初対決したイチローにとって忘れられない一戦となったに違いない。【四竈衛】