マリナーズのイチロー会長付特別補佐(44)は、エンゼルス大谷翔平投手(23)の今季3勝目を、ダッグアウト裏のモニターを通して見守った。3日前に選手登録から外れたことで、直接対決は実現しなかった。「対戦したかった」と無念さを明かす一方で、期待を込めてエールを送った。

 実際の打席に立ち、18・44メートルの距離で「投手大谷」の力を体感したかった。同じ舞台に立つことがかなわなかったイチローは、素直な思いを口にした。「対戦したいですよ、それはそうでしょう。特別な才能ですからね、あれは。165キロを投げるというのは。それは単純に見てみたい、本当に」。

 初対戦となった大谷に対し、マリナーズ打線は6回まで無得点。イチローにすれば、無念さだけでなく、もどかしさを感じたのかもしれない。「テレビで見ている印象だから、日本で見ている人と変わらない印象になってしまうね。直接やれば、こんなボールだったとか言えるんだけど、皆さんと同じですからね。目線が。なかなか、生きたコメントになりづらいですね。だってブラジルで見ているのと同じですからね」。日本でも、ブラジルでもない。同じ球場にいながら映像を見ている現実を受け入れるためにも、笑うしかなかった。

 その一方で、マリナーズへの復帰会見で「世界一の才能」と表現した大谷のプレーは、しっかりと目に焼き付けていた。「ちゃんとした投手というのは分かるし、ちゃんとしたいい打者というのもね。この3日間で、それぞれ1日ずつだけど、なかなか欠点が見つけづらいかな」。3日間だけで判断できるほど、甘い世界ではない。18年間、メジャーの第一線で活躍し続けたからこそ、ありきたりな賛辞を並べるつもりもなかった。

 才能を認めるからこそ、長く、太く、輝いてほしい。「194センチのおじいちゃんになることくらいですかね、欠点は。だいぶ先のことなんで、現段階ではなさそうですね」。対戦できなかった寂しさを、イチローは特有のジョークに包み込んだ。【四竈衛】