右肘内側の側副靱帯(じんたい)に新たな損傷が見つかったエンゼルス大谷翔平投手(24)についてマイク・ソーシア監督(59)が「来年は投げない」と発言した。現段階では、医師が勧める靱帯再建手術を受けるかどうかは未定で最終的には大谷の決断次第。「二刀流」にこだわる大谷がどんな選択をするのか-。同監督のフライング気味の発言は、あらためて大谷への注目度の高さを示すことになった。

発した言葉の重みをおそらくソーシア監督自身は感じていなかった。「He is not gonna pitch next year(来年、彼は投げないだろう)」。マリナーズとの試合前、ベンチに座り、担当記者に囲まれた同監督は大谷の1年目の歩みを振り返りつつ、今後の期待について語る中で、来季について確かに「投げない」と口にした。そのひと言が即座に伝わったことで、エンゼルスに情報の真偽に関する問い合わせが殺到。広報部が対応に追われる事態に発展した。

今月5日、大谷の右肘靱帯に新たな損傷が見つかり、医師から「トミー・ジョン」と呼ばれる再建手術を勧告されていることが明らかになった。10日に大谷とエプラーGMが話し合ったものの、結論は保留。打者としてプレー継続が可能な大谷は、シーズン最終戦まで出場したい気持ちを伝え、エンゼルス首脳陣も大谷の意向を優先する方向で固まった。

その一方で、球団の担当医が復帰まで最低1年を要する手術を勧めることもあり、ソーシア監督をはじめ首脳陣は、来季の「投手大谷」を戦力として計算するわけにもいかない。手術後、復帰が見込める20年に「20~24試合に登板するとすれば、24勝はともかく19試合に勝てる才能を持っている。打者でも300~350打席は立てる」と期待を込めたのも、万全の状態での「二刀流」復活を願っているからだった。

手術に踏み切るか否かはあくまでも大谷の決断次第。シーズン終了後、他の医師の診断を受け、「セカンドオピニオン」を参考にする可能性も含め、複数の選択肢は残されている。ただ、手術を回避して他の療法を選択するとしても、来季中に登板できる可能性は低い。ソーシア監督の「投げない」発言は、エンゼルス側の覚悟を示すものだった。

試合後の大谷は言葉を残すことなく、クラブハウスを後にした。ただ、「今年はすごく厳しい状態ですけど、その中でもなんとか頑張っていきたい」(10日)と話した思いは変わっていない。「二刀流」にとって最善の選択は何か。周囲の雑音はともかく、大谷自身が納得できる結論をファンも待ち望んでいるに違いない。【四竈衛】