【シアトル(米ワシントン州)26日(日本時間27日)=四竈衛】今季限りでマリナーズを退団する岩隈久志投手(37)がアスレチックス戦の試合前、始球式を行った。サプライズで捕手役を務めたイチロー会長付特別補佐(44)を相手に、「惜別」の1球を投じた。

中堅後方の大型スクリーンに15年ノーヒッターなど活躍シーンが映し出されると、地元ファンは総立ちの拍手で出迎えた。マウンド上の岩隈は、歓声に応えながらまだ気付かない。事前の打ち合わせでは、通訳のアントニー鈴木氏が捕手役のはずだった。ところが、実際に登場したのはイチロー鈴木だった。「なかなか出てこないと思っていたらイチローさんだった。ちょっと驚きでしたけど本当にありがたいです。イチローさんが受けてくれるということが…。本当にマリナーズでやってきて良かったと思います」。緩みそうになる涙腺を笑顔でこらえ、しなやかなノーワインドアップからイチローのグラブめがけて投げ込んだ。

昨年9月に右肩手術を受けた。マイナー契約を結んだ今季は実戦登板まで回復したが、メジャー復帰はかなわなかった。それでも、マリナーズは現役選手としては異例のセレモニーを用意し、家族を招待。岩隈の功績に最上級の敬意を表した。「今季に関しては精いっぱいやった。次につながるステップになれた。いい勉強になったと思います」。来季は古巣楽天を最右翼に日本球界復帰が確実。日米通算170勝右腕は、一抹の寂しさと明確な目標を胸に、シアトルに別れを告げた。