辛口で知られるニューヨーク・ポスト紙のシャーマン記者が、地元ヤンキースのアンドゥハーでもトーレスでもなく、大谷に1位票を投じたのが印象的だった。理由は「大谷は文字通りルーシアン(ベーブ・ルースの名が語源で傑出した活躍のこと)だ。ルース以来、投打でこれだけの数字を残した選手は誰もいない」と書いている。

同じく大谷に1位票を入れたヤフースポーツのパッサン記者は「アンドゥハーの打撃は好きだが守備は良くない。大谷がやったことは歴史的で、優れた打者で並以上の投手だった」。MASNスポーツのメレウスキ記者も「驚くべき二刀流パフォーマンスを見せた」と説明。二刀流の希少性が選出の大きな要因となったのは明らかだ。

一方、アンドゥハーを1位にしたタンパ拠点のジ・アスレチックス記者トリビオ氏は「彼がヤンキースが好成績を挙げる大きな鍵になったから」と説明した。大谷に1票も入れなかった記者も含めて1位にしなかった記者が30人中5人いたが、今季100勝62敗でポストシーズンに進出したヤンキースと、80勝82敗で西地区4位にとどまったエンゼルスの勝利数が投票に影響を与えたとみられる。また、大谷に1位票を入れたボストン・スポーツジャーナル紙のマカダム記者は発表直前の記事で「大谷とアンドゥハーは接戦が見込まれる」とし、USAトゥデー紙の大物記者ナイチンゲール氏は発表直前にツイッターで「大接戦でアンドゥハー受賞だろう」と予想するなど、読みを外した記者も多かった。

過去に日本選手が新人王候補になったとき、年齢や日本でのプレー経験から「新人に該当するのか」と常に論争が起こったが、大谷の場合はそのような論争は一切なし。移籍時に23歳と若かったこと、大型契約ではなくメジャー最低保障の年俸54万5000ドル(約6000万円)のマイナー契約での移籍だったことが、新人王へのふさわしさという点で印象を強めたのではないだろうか。【水次祥子】