【ラスベガス(米ネバダ州)10日(日本時間11日)=四竈衛、斎藤庸裕】マリナーズが菊池取りへ本腰を入れる。米大リーグの球団幹部らが集まるウインターミーティングが開幕。ポスティングでメジャー移籍を目指す菊池雄星投手(27)の争奪戦が本格化する中、有力候補のマリナーズが猛烈なアタックをかける。金銭面だけでなく、過去に多くの日本人選手がプレーした環境面などをアピール。イチローからのメッセージなど「ウルトラC」も視野に入れ、獲得を目指す方針を固めた。

やはり、マリナーズは本気だった。これまでディポトGMは「注目している。日本ですばらしい実績を残した選手」と、一般論として語るにとどめてきた。だが、ウインターミーティングの会場で、マリナーズの編成部門関係者は明確な言葉で獲得意思を明かした。「我々には先発投手が必要。彼は我々が成し遂げるうえで大きな要素となるだろう」と、菊池へ真っすぐなラブコールを送った。

今オフ、マリナーズはチームの大改革に着手した。先発左腕パクストンをはじめ、カノ、セグラ、ズニーノら主力選手を続々とトレードで放出。ほぼ別のチームに変身した。一方で、他球団から若手の有望株を獲得。長期的な視点での再建に重点を置いてきた。菊池の場合、5年以上の長期契約が見込まれることもあり、ディポトGMは「我々がやろうとしていることの一助になってくれるだけの力は十分あると思う。彼の素晴らしさは成績が物語っている」と先発の柱として期待した。

交渉相手は最強代理人のボラス氏だが、条件面で渋るつもりはない。先述の関係者は、これまでマリナーズは「金銭面を問題にしたことがない。価値のある選手には、それに応じた金額が必要」と話す。さらに、過去20年以上にわたり、日本人選手がプレーしてきたこともあり、環境面の良さを強調。日本から最も近く、直行便もある利便性、歴史のある日本人コミュニティー、治安、教育施設の充実、菊池の故郷・東北に似た気候など、丁寧に伝える方針だ。

また、交渉の展開次第では、イチローからの直接電話を含めた「メッセージ作戦」も真剣に検討中だ。菊池のハートに速球を投げ込む可能性もある。一方で、約10球団とみられるライバル球団も水面下で折衝を続けており、交渉期限の来年1月2日(日本時間3日)まで、激しい攻防が繰り広げられそうだ。

◆ウインターミーティング メジャーやマイナー、独立、国外リーグなどあらゆる球界の関係者、オーナー、GM、監督ら数千人が一堂に会し毎年12月に催される野球界最大のイベント。トレードやFA選手獲得の交渉が活発に行われる他、野球界での就活フェア、関連ビジネスの展示会、関連セミナーなどが行われる。今年は9日に授賞式などのイベントで開幕。10日から4日間で各球団によるメディア対応が行われ、最終日の13日(日本時間14日未明)に終幕する。