西武からポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指している菊池雄星投手(27)の移籍先最有力にマリナーズが浮上していることが12月31日、分かった。複数球団と交渉も佳境を迎える中、交渉期限は米東部時間の1月2日午後5時(日本時間3日午前7時)と迫る。「メジャーリーガー雄星」誕生へ、いよいよカウントダウンに入った。

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交渉期限が迫る中、移籍先最有力にマリナーズが浮上した。菊池はメジャー全30球団OKの意向で12月16日に渡米。ここまでの約2週間、代理人を務めるスコット・ボラス氏を中心に、複数球団と水面下で交渉を進めている。

その中で、マ軍は6年規模の大型条件を準備。球団幹部は熱烈ラブコールを送り続けてきた。関係者の話を総合すると、条件面だけでなく、獲得への熱意も菊池サイドに好印象を与えている模様。佳境を迎え、マ軍が筆頭候補に挙がった。

交渉が進む中、菊池の背中を押し続けてくれたのがボラス氏だった。今季10勝目を挙げた昨年8月31日のオリックス戦後。不安が頭をもたげた。「自分はメジャーでやれるんだろうか」。19試合目で、ようやくつかんだ2ケタ勝利。イメージ通りの結果を出せず、夢の舞台を目指してきた気持ちが揺らぎかけた。

そんな思いを察したように連絡をくれた。まだ代理人契約を結ぶ前。菊池は顧客でもない。それでも「『雄星なら絶対大丈夫。自分を信じてマウンドに立ちなさい』と励まし続けてくれたんです。あの時間はすごく大きかった」。通訳を介しながらの電話は30分以上に及んだ。花巻東時代から、いかなる時も励ましてくれた同氏だからこそ、今回も全幅の信頼を置き、委ねることが出来ている。

父・雄治さんの存在も大きな支えだった。忘れられない言葉がある。高校からNPBへ進むと決めた18歳の冬。それまで進路について何も言わなかった父にぽつりと言われたという。「『アメリカに行ってほしかった。注目を集めないマイナーで5年くらいやってメジャーを目指してほしかった。日本はどうしても注目が集まる。もし結果が出なかった時、お前がたたかれるところは見たくない』と。そう言われたのは今でも覚えています」。親心を痛いほど感じた。そんな父への感謝と恩返しの思いが、どんな苦境に立たされても、夢を失わせなかった。

周りの力があったからこそ、長年抱き続けた夢の舞台が、戦う舞台となる。新年の幕開けとともに、菊池雄星がメジャーの扉を開ける日がいよいよ迫ってきた。【佐竹実】

 

◆菊池雄星(きくち・ゆうせい)1991年(平3)6月17日、岩手県盛岡市生まれ。花巻東では甲子園に3度出場。3年春は準優勝、同夏には最速155キロを計測して4強入りした。09年ドラフトでは6球団競合の末、1位で西武入団。2年目の11年に1軍デビュー。17年は最多勝、最優秀防御率。ベストナイン2度、ゴールデングラブ1度。184センチ、100キロ。左投げ左打ち。