【サプライズ(米アリゾナ州)2日(日本時間3日)=四竈衛、斎藤庸裕】マリナーズのイチロー外野手(45)と菊池雄星投手(27)が初競演した。イチローが7番右翼でスタメン出場し、菊池はオープン戦2試合目の先発。菊池を「かわいいね」と評したイチローは2打数無安打、「一生の思い出」と語った菊池は3回2安打3三振2失点だった。18歳差の2人が化学反応を起こしていく。

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浅い平凡な飛球でも、イチローが捕球すれば、菊池にとっては特別だった。3回無死一、二塁で9番ギャラガーを右飛に打ち取った直後、菊池は約50メートル離れた右翼イチローに対し、帽子のツバに手を当て、軽く会釈をして「お礼」の思いを伝えた。

だが、イチローは、菊池のしぐさに気付いていなかった。「え、そうなの? 余裕だね」。超美技ならともかく、数歩動いただけの凡飛。感謝されるプレーではない。「投手のこと見ないから。どんなプレーした時にも。それは応えないわけにはいかない。今日のアレで応えるわけにはいかないけど、そりゃ、ちょっと面白いね。そんなセンスあるんだ。そりゃ、かわいいね」。

菊池には、待ちわびた一戦だった。マ軍入りを決断して以来、同じグラウンドに立つ光景を思い浮かべてきた。右飛の際、三塁のバックアップに向かいながらイチローの捕球を見届けた。「カバリングに行きながらうれしくなりました」。前日、イチローの遠征メンバー入りを認識。同じスコアボードに名前が並ぶ瞬間を心待ちにしていた。

かわいい後輩の投球を、イチローは温かくも客観的に見守った。全39球中ストライク31球。「安心感あるんじゃないの。どれでもストライク取れそうな感じするし、投手有利のカウントに持っていくテクニックが相当高いんじゃないかな」と印象を語った。新人離れしたマウンド度胸も高評価した。「自信はこれからだと思うけど、投げる日は朝から表情が違うのは当然。それを初めて見て、それでもあれだけポンポン投げる。日本で一番いい左投手と聞いていますから、当然といえば当然だけど、なかなかできることじゃない」。

初の敵地、初黒星、初死球など初もの尽くしの中、この日の菊池にメインイベントはイチローとの初競演。「一生の思い出になると思います」。取材を終えると、私用車で帰路に就くイチローに直立不動であいさつし、深々としたお辞儀で見送った。