【ピオリア(米アリゾナ州)14日(日本時間15日)】平成最後のイチローを見逃すな-。春季キャンプに招待選手として参加していたマリナーズのイチロー外野手(45)が、日本開幕2連戦(対アスレチックス、東京ドーム)のメンバーとして帰国した。

マ軍首脳陣が出場を明言する一方、28日(同29日)の米国開幕戦以降の立場は未定。巨人とのエキシビション2試合、公式戦2試合で、どんな結果を残すか。今後を左右する戦いが始まる。

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前日までの突風が収まっても、アリゾナを離れるイチローには強い逆風が吹き付けていた。母国に降り立ち、今の心境をどう表現するのだろうか。

昨季のマ軍との契約時。去就が決まらなかった時期の心持ちを「泰然」と表現した。今季はプロセスが違う。会長付特別補佐としてシーズンを終え、マイナー契約ながら現役復帰への道を約束され、日本での開幕戦に臨む。

「最低50歳まで現役」の目標以前に、明確なターゲットが定まった。日米通算4367安打を重ねながら、打撃フォームを改良してキャンプ初日に臨んだ。約9カ月のブランクを考えれば、大幅な変化はリスクと背中合わせに映る。意図については「そんなこと言わなくてもいいんじゃないの」とだけ言った。

一般的な常識や固定観念には、常にあらがってきた。プロ28年目でも変わっていない現状打破の姿勢。ただ、例年以上に短い今キャンプは、結果が伴わなかった。

オープン戦初戦で適時打を放ったものの、その後は快音が途絶えた。持ち前の粘り強いファウルが減り、凡フライ、三振を重ねる姿に、試行錯誤の過程が見え隠れした。紅白戦を含め、安打を放ったのはいずれもデーゲーム。照明施設が不十分なキャンプ地のナイターで、タイミングが合わなかったのも、おそらく偶然ではない。

キャンプ最終日に「出られる状態にしたいね、早くね」と率直な思いを口にした。裏を返せば、満を持して出られる状態ではない。謙遜でなく、まだ自信を取り戻せていない。

年間200本安打が近づくたびに「吐きそうな」思いで打席に立ち、大記録をクリアしてきた。幾多の否定的な意見もバットではね返してきた。今回は米国開幕後の処遇を含めて「待ったなし」の状況。故障者が続出し、可能性は残されているとはいえ、猶予期間は限られる。

周囲からは日本で引退の声も聞こえてくる。17、18日に行われる巨人との2試合は、調整以上の意味を持つ。開幕2戦は言うまでもない。強い逆風が吹く中でも、イチローはいつもと変わらず東京ドームでバットを掲げるに違いない。凱旋(がいせん)という言葉が、ぴたりと当てはまるかどうかは、結果にかかっている。【四竈衛】