マリナーズのイチロー外野手(45)が、4万5787人から大きな拍手を浴びた。20日、MLB開幕戦のアスレチックス戦(東京ドーム)に「9番右翼」でスタメン出場。昨年5月2日以来の公式戦復帰を果たし、野手ではフランコ(ブレーブス)に次ぐ、45歳4カ月での開幕戦出場の年長記録を打ち立てた。日米通算4368本目の安打は生まれなかったが、マ軍サービス監督は21日も出場させる考え。誰もが待ち望む1本が欲しい。

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東京ドームがざわついた。4回裏、いったん右翼の守備位置に就きかけたイチローがベンチへ戻ってくる。その前でナインとハグを繰り返し、ベンチへ下がった。見納めか。そんな悲しい“予測”が渦巻いた。だが試合後に淡々と話した。

イチロー いやいや知ってましたよ。2打席って。それ(ハグ)は分からなかった。でも、あれ日本のファンの人はね。どうなんだろう。アメリカではよくやるけどちょっと戸惑っただろうね。

試合前から「今日は2打席」と伝えられていた模様。予定通りの交代だ。しかし4回の守りで出ていかなければファンは寂しい。マ軍サービス監督がファンのためにサービスし、声援を送れるシーンを演出した。

2年連続14度目のメジャー開幕戦は45歳の大ベテランにとって、これまでと違う試合になった。昨年5月2日、シアトルでのアスレチックス戦を最後に会長付特別補佐に就任。現役続行は示していたものの試合出場はなかった。今は違う。ユニホームを着て真剣勝負に戻ってきた。しかも日本で。

イチロー まあ、特別な開幕です。見ているファンの人たちもちょっと違う雰囲気に感じましたね。ジャイアンツとやっていた時は練習っぽい雰囲気が全体にありましたが、今日は全くなかったです。

生けるレジェンドを前に息をのむ観衆に結果は示せなかった。2点を追う3回無死一塁に巡ってきた最初の打席。ア軍ファイアーズの2球目、144キロストレートにバットを出したが二飛に終わった。4回の2打席目は2番手ヘンドリックスからファウルを4球打つなど粘った結果、四球を選んだ。自打球を右足に当てる場面もあったがスイングを続けた。その四球については「いいんじゃない」と振り返った。

約1年、真剣勝負から遠ざかったブランクはある。昨年12月、イチローに少しだけ聞いた。試合に出られなければ面白くないのでは? 答えはシンプルだった。

「それはそうですよ。面白くはない」

現役大リーガーであることに生活の全てをささげている男。「ありったけの自分を野球に注ぎ込んでいる」。その言葉は本物だ。サービス監督は今日21日の出場も口にした。米国に戻ってからのことは明言しなかったが、未来は先の話。もちろん過去も関係ない。まずは1本、打つこと。それがイチローがイチローであることの証しだ。【高原寿夫】