米大リーグは28日(日本時間29日)に全30球団が米国で初戦を迎える。メジャー6年目を迎えるヤンキース田中将大投手(30)は、本拠地でのオリオールズ戦で2年ぶり4回目の開幕投手を務める。ここまで順調な仕上がりを見せる田中を、楽天1年目に編成本部長として見守った山下大輔氏(67=野球評論家)がフロリダ州タンパのキャンプ地で直撃。盟主ヤ軍のエースとして成熟し始めた右腕の現状を聞いた。(構成=四竈衛)

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06年9月25日の高校生ドラフト。4球団が競合した末、楽天が交渉権を得た当時、編成本部長を務めていたのが、山下氏だった。

山下氏 指名した選手が4回目の開幕投手。短い期間だったが、そういう選手に関われて誇らしい。

田中 エース(セベリーノ)がケガしたのはありますけど、それでもあの舞台に上がれるのはすごく光栄なこと。堂々といい投球をしたいと思います。

山下 エースだからこそできること。安定した成績を残してきたから。

田中 あまりそういう意識はないです。日本より試合数は多いですし、2桁勝利する投手ははるかに多い。ただ2桁勝つだけでは意味がないと思ってます。

過去5年連続で2桁勝利を挙げ、昨年のリーグ優勝決定戦では唯一、レッドソックスから白星を挙げた。

山下 200イニングへのこだわりは

田中 今は野球が変わってきているので、正直ないです。1つでも多くのアウト、イニングを投げたいという思いは変わらないです。ただ、自分の投球のクオリティーを上げていくことが、イニング数が伸びることにもつながってくると思っています。

山下 調子の悪い時でも立て直せるのは?

田中 どんな状況であれ、現実から目を背けないことですね。自分で打ち破るためにしっかりと向き合って、それを解決するためには何が自分にとってベストなのかを考えながらやっていくことですかね。

山下 プロ入り当時は力投タイプ。今は、静かに投げているようで、制球の精度が上がったようだが。

田中 こちらでは速球の平均は並以下なので、スピードよりは捕手の構えた、要求しているところにしっかり投げ込むというのを第一に考えています。

田中のプロ1年目。苦しむ新人に対し、山下氏は同年代の名球会投手からの技術的な助言を田中に伝えた。

田中 1年目の途中からですね。正対して投げていたのを斜めにして、ノーワインドになった時も斜めに向いてやってます。

山下 今季をどんな1年にしたいか?

田中 チャンピオンリングを取りに行くというのが一番の目標です。ヤンキースは常に勝っていかなきゃいけないチーム。その中で、先発のマウンドに1試合でも多く立って、いい投球をしていくだけです。

山下 サバシアが今季限り。年齢的にもエース、リーダーになる。

田中 そこはあまり意識してないですね。

10年ぶりの世界一へ。静かで落ち着いた田中の口調に、秘めた自信がのぞいた。