【マイアミ(米フロリダ州)15日(日本時間16日)=斎藤庸裕】カブスのダルビッシュ有投手(32)が、昨年5月20日以来、330日ぶりの白星をつかんだ。

マーリンズ戦で5回2/3を投げ4安打2失点。3回以降、今季ブルペンでも練習していなかったツーシームをぶっつけ本番で使い、右打者の懐を突いた。毎年4月15日の「ジャッキー・ロビンソンデー」では初めての登板で、背番号42の重みを感じながら、約11カ月ぶりの復活星を挙げた。

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仲間のはしゃぐ姿が、ダルビッシュは何よりうれしかった。「勝つとみんなが喜ぶ。そういうのを見ると、勝てて良かった」と胸をなで下ろした。今季最多の96球。勝利最優先で腕を振った。昨年5月20日以来、330日ぶりの復活星。「330回、寝たってことですよね。相当、寝ましたね」とニヤリ。それだけ長い道のりだった。

こだわりのスタイルに別れを告げた。「もういっかと思って」。43球目、ツーシームを使った。「フォーシームが(ストライク)入らないから、もうなんか、『ツーシーム投げたれ!』と思って」。究極の開き直りが勝ち星への突破口になった。昨年まで持ち球ではあったが、今季ブルペンで1度も投げなかった球種。本来は直球、スライダー、カーブ、カットボールが軸で「そういうピッチングで今年いきたいと思ったけど、シーズン入ってみたら、結果を出さないといけない」。“最終手段”を使い、勝つことだけを考えた。

開幕からフォーム固めに苦しんできた。足の上げ方、骨盤の向き、リリースのタイミングなど試行錯誤を繰り返す日々。ただこの日は「あんまりフォームのことは考えず、良いところにしっかり投げよう」と、シンプルに捕手のミットをめがけた。ツーシームで最速は98・7マイル(約158・8キロ)。トミー・ジョン手術を経験しても「まだ自分にも力が残っているんだなと分かった。すごく自信になりました」と胸を張った。

昨年、新たな右肘の痛みを訴えながら、原因を特定できなかった。精神的にも苦しんでいた時期とは違い、今年は心身共にスッキリして臨んだ。キャンプ中、マドン監督から「別人のよう」と言われるほど、生まれ変わった。この日は、あと1死で6回3失点のクオリティースタートをクリアできたが、「そんなこと今は全く考えていない。前だったら思ったかもしれないけど、もういいわと思って。とにかくチームが勝ってくれればいいから」。険しい道を乗り越えた、重みのある復活星となった。

▽天国の先駆者を思い浮かべ、マウンドに上がった。メジャー8年目で「ジャッキー・ロビンソンデー」に初登板。有色人種初のメジャーリーガーとなったロビンソン氏に敬意を表し、背番号「42」を着用した。13年の10月には映画のイベントでロビンソン氏の妻レイチェルさんと対面し、約420万円をロビンソンさんの基金に寄付するなど思い入れもある。「ロビンソンさんがいなかったら、僕らみたいに有色人種というか、そういう人たちがプレーする機会がなかった可能性がある。本当に、感謝してできた」と語った。