<エンゼルス12-3マリナーズ>◇8日(日本時間9日)◇エンゼルスタジアム

渡米前、菊池は後輩をこう表現していた。「日本でNO・1だと思ったバッターは大谷です。インコースをあれだけきれいにさばかれると、どこに投げればいいのか、という感覚だった」。

左腕にとって、打者大谷の記憶は打たれたシーンしか残っていないという。そこまで認める男が、もし米国で打てなかったら-。「メジャーの投手はそれだけすごいレベルだということ。ひょっとしたら、自分には無理かもしれない、と思ってしまったかもしれない。大谷が向こうで打ったことで、自分もメジャーでやれると思えた」。

自分が打たれた男は、海を渡っても打ち、左腕に逆説的な“自信”を与えた。新天地に挑む菊池の背中を最後に押したのは、メジャーの剛腕たちを捉えるバッター大谷の姿だった。

新たな舞台での再戦は完敗だった。天を仰いだ菊池と、マッスルポーズを決めた大谷。メジャーの“先輩”は今回「経験したことがないような悔しさ」を与えた。これから必要なのは、逆説的な自信ではなく、確かな自信。大谷のバットは、左腕の背中を再び強く押したに違いない。【佐竹実】