<MLBオールスターゲーム:ア・リーグ4-3ナ・リーグ>◇9日(日本時間10日)◇プログレッシブフィールド

苦楽をともにし、道は切り開いていく-。初めて出場したMLB球宴を通じ、ヤンキース田中将大投手の生きざまがかいま見えた。登板前日のメディア囲み。淡々とした口ぶりも、力強さが伝わってきた。

「自分の課題、自分の投球に対して、僕は向き合い続けてやっていくことが大事だと思うので。これからもそういうふうにやっていくし、そうであり続ける」

6年前のシーズンオフ、今でも強烈な印象として残っている田中の言葉がある。13年12月1日、宮城県・塩釜市でのトークショーで、小学生に問われた。「プロ野球選手になりたい。どうやったら、なれますか」。答えはシンプルだった。「その気持ちをずっと持ち続けること」。

楽天で日本一になった13年に24勝0敗、翌年のメジャー1年目も13勝を挙げた。3年目までは「自分の直感、感覚を優先に投げていた」。だが、17年に壁にぶつかった。前半戦、負けが先行し、防御率は5~6点台。課題を克服しようと、「自分でデータもしっかり見ながら、事前にプランを練って投球していく」ことを意識し始めたという。順風満帆なキャリアであっても、苦難はその先々で訪れる。「そこで目を背けてしまったら、上がり目はない」。正面から立ち向かう気持ちの強さがある。

前半、5勝5敗で終えた今季もスプリットの精度が課題だった。「ものすごく苦しんでいる部分もありますし、でもやっていれば、こういうふうにいいこともあるんだなと」。まい夫人、2人の子供と球宴を楽しんだ。それでも、夢描くものは「一番はワールドシリーズを制覇してチャンピオンリングをとりたい。そこはすごく、思い描いている部分」。一心不乱な姿が、なんとも田中らしかった。【MLB担当=斎藤庸裕】