自炊をしようにも必要な具材がなかった。米カリフォルニア州ロサンゼルスの自宅でカレーライスを作ろうと思い立った。近くのスーパーへ向かったが、以前は大量にあったジャガイモが売り切れていた。肉、タマネギ、にんじんはかろうじて購入。ジャガイモなしで作るか迷ったが、出来上がりを想像し、断念した。

正直、1カ月前には予想だにしなかった状況だ。メジャーキャンプの取材でアリゾナ州に向かったのが2月10日前後。帰宅は開幕直前、エンゼルスとドジャースの3連戦(3月22日~24日)のはずだった。取材側としてもメジャー開幕の本番へ緊張感をもって、「さぁ、やるぞ!」とアドレナリンが出てくる時期。だが事態が予想以上に悪化し、今は動揺を隠せない。

もちろん、選手にとっても環境面で相当、厳しい状況だろう。エンゼルス大谷翔平投手(25)は二刀流で順調に調整を続けていた。オープン戦が中止となるまでは、9試合で24打席に立った。ブルペンでは投球の強度を上げ、5月中旬の復帰へ着実に進んでいた。開幕が再延期となったことで、二刀流でシーズン開幕となる可能性はある。だが当初の予定では、マイナーでの登板を経てメジャー復帰という構想だっただけに、実戦を積んでいく必要があることに変わりはない。

米疾病対策センター(CDC)の要請で、今後は8週間、50人以上で集会ができない。投手のボールを見る、打者の反応を見る、という目的で行う実戦想定の“練習”なら少人数で可能だが、観客のいる試合と違ってアドレナリンは出にくい。本番に近い実戦ができない状況となり、開幕延期と同時に大谷の二刀流復帰もずれ込むかもしれない。一刻も早い環境の回復を願ってやまない。【斎藤庸裕】