18年にメジャーを担当してから3年目。目の前で起きていることを見て、感じて、選手の言葉を聞き、記事を書いていた。今年、予定されていた開幕戦の日は、世界的に感染が拡大している新型コロナウイルスの影響で自宅待機となった。「当たり前」と思っていた日々が突然、目の前から消えた。

ロサンゼルスでは、ドジャースが本拠地で開幕戦を行うはずだった。地元テレビ局の報道によれば、球場近くの駐車場は新型コロナウイルスの感染を調べる検査会場となり、多くの車が殺到。渋滞で数時間待った住民もいたという。本来ならファンが一斉に球場に駆けつける光景は、はかなくも一転した。

生活の一部となっていたメジャー取材の毎日。野球の現場は、MLBの組織を始め、各球団の選手、チームスタッフ、球場で働く従業員などそれぞれの仕事がかみ合い、そこにファンが集まって初めて整う。仕事のペースをつかみ、慣れていくうちに徐々に、多くの人が整えてくれている環境の「ありがたみ」を失っていたのかもしれない。目の前の出来事は「当たり前」ではないと再確認した。

18年3月29日、エンゼルス大谷のデビュー戦は、アスレチックスの本拠地オークランドコロシアムで行われた。試合前から多くの日米メディアでカオス状態。慌ただしく事が進む中、大谷はメジャー初打席、初安打をマークした。立ち止まって考える余裕もなく、前進していたが、あの時の経験がどれだけ貴重でありがたいものか。

エ軍の主軸のトラウトやプホルスはSNSを通じ、「みんなと共に」と協調を呼びかけた。選手もファンも、開幕をこれまで以上に強く待ち望んでいる。現場にいられる感謝を忘れずに、来るべき日を待ちたい。【斎藤庸裕】