医師の言葉をかみしめて。マーリンズの招待選手として今春メジャーキャンプに初参加していた加藤豪将内野手(25)が19日(日本時間20日)、メール取材で近況を明かした。昨オフ、7年間在籍したヤンキース傘下からFAとなり、マ軍とマイナー契約を結んだ。今季はメジャー初昇格への期待が一気に膨らんでいたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響でキャンプは中断。今も開幕のめどが立たない中、GOSUKEは黙々と準備を続けていた。【取材・構成=佐井陽介】

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皮肉なことに、ロサンゼルスの空は青さを取り戻しつつある。「多くの人が在宅勤務になり車も減って、LAの有名なスモッグも減って『青空が見える』とニュースになっていました」。加藤は米国西海岸の現状をそう教えてくれた。

新型コロナウイルスの感染拡大により、カリフォルニア州では現地時間3月19日に外出禁止令が発令された。ロックダウン(都市封鎖)状態となり、自動車の交通量も減少。大気汚染による「ロサンゼルス型スモッグ」が一時的に消えつつあるという。そんな非常事態にあっても、加藤は落ち着いて準備を進めていた。

「プロ選手になってから、どのような環境でも自分のできることを精いっぱいやることが大事だと気付きました。経験したことがない環境、自分ではコントロールできない環境を与えられても、昨日の自分よりも成長して、明日に向かっていくということを学んできました。だから今の状況でも常に野球と向き合い、成長したいと思っています」

昨オフ、マーリンズとマイナー契約を結んだ。今春は招待選手としてメジャーキャンプに初参加。だが、メジャー初昇格を目指していた3月中旬にキャンプ中断と球団施設の閉鎖が決まり、カリフォルニア州サンディエゴの実家に戻った。

「自分の住んでいる町も3月19日に自宅待機令が出ました。散歩やランニングはソーシャルディスタンスを守ればOKなのですが、警察が多く出回っていて、ビーチや公園、大人数での買い物などで罰金を払わされている人たちがいます。米国では今まで風邪をひいてもマスクをする文化はなかったのですが、最近はマスクをしている人も多く見かけますね。マスクをしないと罰金をとられる地域もあるみたいです」

加藤からすれば、プロ8年目でようやく手にした大チャンスをウイルスに阻まれている形。それでも愚痴一つこぼさず黙々と練習に没頭できるのが、マイナー生活7年で忍耐を身につけた25歳の強みでもある。

「多くの野球選手が練習場所に困っているようですが、自分は何とかトレーニングする場所と打撃ケージを確保して、十分とは言えませんが、ほぼオフの時と同じように練習できています。いつ呼ばれてもいいように準備しています」

最近、知人の医師がふと本音をこぼしていた。「自分のコントロールできない環境で、体もメンタルもギリギリのところで精いっぱいやっている。それでも苦しんでいる人たちを全員助けてあげられないことがつらい」。

「いろいろと制限がある生活ですが、今も野球と向き合えている自分は幸せなんだとつくづく実感します。つらく苦しい思いをする人が1人でも少なくなり、状況が早く改善されることを心から願っています。そのためにも、今は自分のできることをできるだけやろうと思っています」

野球を生業(なりわい)とし、メジャーを目指すことができる。置かれた立場への感謝がまた、GOSUKEの原動力となっている。

◆加藤豪将(かとう・ごうすけ)1994年(平6)10月8日生まれ。米カリフォルニア州マウンテンビュー出身。両親は日本人。3歳で日本に移り神奈川で生活。6歳で米サンディエゴに戻り野球を始めた。ランチョバーナード高では主に二塁手で3度の州王者。尊敬するイチローの影響で左打ちに変えた。13年ドラフト2巡目(全体66位)でヤンキース入団。今季はヤ軍時代に交流のあったデレク・ジーター氏がCEOを務めるマーリンズとマイナー契約し、招待選手としてキャンプに参加。188センチ、88キロ。右投げ左打ち。