既存の概念が、思わぬ方向へ変わるかもしれない。15年のシーズンMVPで、球宴に6度出場しているフィリーズのブライス・ハーパー外野手(27)がインターネット上の番組で、五輪での米国代表のドリームチーム形成を提言した。エンゼルス大谷と主砲トラウトを引き合いに「日本のために大谷がプレーし、マイク・トラウトと対戦する。異国の地で、並んで国歌を聞く。これ以上のものはない」と、世界一を争う舞台での夢の対決を熱望した。

これまでMLBは、シーズンと時期が重なるため、メジャー選手を米国代表チームに派遣していなかった。今年2月末にメジャー40人枠の選手の出場を認めたが、スター選手らベンチ入りメンバーの出場は非現実的。それでもハーパーは「コロナウイルスが理由でオリンピックは来年になる。代表的なメジャーリーガーをオリンピックに参加させて、世界を驚かせようじゃないか」と協調を呼びかけた。

夢物語かもしれない。だが、風向きが変わる可能性はある。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、MLBはあらゆる可能性を探り、開幕を目指している。中には、非現実的とも思える奇抜な案も含まれる。今までの常識では考えられないことが、起きようとしている。ならば来年、メジャートップレベルの選手を五輪に出場させることも、不可能な話ではない。

野球は米国でナショナルパスタイム(国民的娯楽)と呼ばれ、「野球が必要だ」という声も多い。収益の問題などビジネスの側面を超える価値観も生まれつつある。ハーパーは「収益を失うから、僕たちを五輪に出場させない? それはばかげている」と言った。MLB屈指のスター選手の感情がこもった発言。米国、また世界の野球のために、プラスへ向かって欲しい。【斎藤庸裕】