エンゼルス大谷翔平投手(26)が、今シーズン初の延長タイブレークで最初の二塁走者として登場した。 60試合の短縮シーズンとなった今季は、延長戦となれば無死二塁からイニングを再開させるルールが適用される。開幕シリーズで初の延長戦となり、9回2死満塁で空振り三振を喫し、イニング最後の打者だった大谷が10回無死の二塁走者となった。

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トルネードの次は二刀流が野球の、世界の人々の希望になる。大谷の二刀流復活には、MLB幹部も期待を寄せる。国際部門の副社長ジム・スモール氏が、大谷の投打の活躍に込める思いをこう表現した。

「大谷の成功は素晴らしい物語で、それは他の物語の一部にもなる。大谷が困難を乗り越えようとしていると同時に、日米の野球ファン、また世界の人々も、今直面している困難に打ち勝とうとしている。彼が、お手本になってくれると期待したい」

依然として、世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が続く。米国では1日の感染者数が7万人前後で増えている。スモール副社長は「今、我々は経験したことのない、前例のない状況にいる」とした上で「彼については全てが前例のないこと。全てが初めて」と、右肘のトミー・ジョン手術と左膝の手術から復活を目指す大谷を重ね合わせた。

かつてのパイオニアも野球の危機的状況に息吹を与えた。94年、選手会とオーナー側が労使交渉で対立し、開幕が1カ月遅れた。泥沼のストライキに陥り、失望していたファンを沸かせたのが、メジャー1年目でトルネード旋風を巻き起こした野茂英雄だった。

スモール氏は、MLBのマンフレッド・コミッショナーと大谷の話題に花を咲かせたこともある。MLBトップも期待を寄せているという。2年前、二刀流の大谷が示してくれたメッセージは「何も不可能なことはない」。大谷の復活が、未曽有のコロナ禍で闘う人々のエネルギーとなる。【MLB担当=斎藤庸裕】