レイズ筒香嘉智外野手(28)が28日(日本時間29日)、本拠地でのブレーブス戦に「4番左翼」でスタメン出場し、逆転の2点適時打を含む2安打を放ちチームの4連勝に貢献した。外角の変化球にアジャストした2本で、あらためて対応力の高さを示した。好調な打線の真ん中に座り、メジャー5戦目で初のマルチ安打。腕自慢との純然たる力比べに、内角を巡る攻防…本格的な勝負に入っていく。

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どっしりと構えつつ、頭脳は冷静かつ明晰(めいせき)だった。1点を追う3回。3四球で2死満塁となって迎えた第2打席。初球の外角カーブは、微妙な判定のストライク。続く2球目、ほぼ同じ130キロの外角低めのカーブを右前へ運び、逆転の2打点を挙げた。「どの球種という意識はないです」。パワー主流の米国とはいえ、速球でストライクを取りに来る確率は低い。タメを作り、やや踏み込んですくい上げた技術こそ、大砲でありながら器用さも兼ね備える筒香の引き出しの1つだった。

第4打席には、救援左腕マツェクのスライダーを右前打。初のマルチ安打をマークした。依然、米国のストライクゾーンに戸惑いは少なくない。だが、言い訳の材料は必要ない。「そこに感情が入ると、心、体の部分が崩れる。感情は今、消している状態。心の乱れはないと思います」。開幕戦こそ落としたものの、その後、レ軍は4連勝。打席での結果を問わず、集中力を維持し続ける筒香に対し、キャッシュ監督も「ヨシはベテランで、メジャーで才能のある選手。気分良くプレーしてくれればいい」と信頼感を深める。

5試合5打点。得点源として、間違いなく中軸の立ち位置を確立した。今後は、ヤンキースのコール、ナショナルズのシャーザーら剛球投手との対決も待ち受ける。150キロ台後半の速球と超一流の変化球を、いかにして打ち返すか。開幕後、無観客の中、球場内に流れたDeNA時代の応援歌もやんわりと断った。「今はレイズの一員。レイズのために力を出し切るだけです」。本当の勝負はこれから-。逆転劇のヒーローは、最後まで本心では笑わなかった。【四竈衛】