総合力でサイ・ヤング賞候補との投げ合いを制した。ツインズ前田健太投手(32)が、インディアンス戦に先発し、7回4安打無失点7奪三振で5勝目を挙げた。スライダー、チェンジアップ、ツーシームを両サイド、低めに集めてイ軍打線を翻弄(ほんろう)。投球だけでなく、素早いけん制や好守備で反撃の芽を摘んだ。ゴールドグラブ賞級の技を交え、ここまで7勝無敗だった相手右腕ビーバーに投げ勝った。

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前田の勝負勘が、重要局面でさえた。2点リードの6回無死一塁。「試合を左右するような場面」と察知した。バッター以上に神経を注いだのは、一塁走者の俊足リンドア。カウント0-2からの5球目を投じる直前に3球連続でけん制し、見事に刺した。「無死一塁でしたし、けん制でアウトにできたのは大きかった」。クリーンアップを迎える前に、反撃ムードを断ち切った。

布石があった。カウント0-1からの1度目のけん制は「アウトにする気はなくて」と、まずは走者の動きをうかがった。そして打者への3球目。リンドアがスタートを切ったがファウル。直後に2度目のけん制を入れると「逆を突かれたような戻り方をしたので、アウトにできるなと」。走者にも警戒される状況で刺すのは至難の業。だが、ここから3球続けたけん制に技術が凝縮されていた。軽めだった1球目から、徐々に全ての動きをスピードアップ。「思い切って速いけん制をした」という3球目はターン、球速、コントロール全てベストのクオリティー。1度はセーフ判定となったが、チャレンジで覆り、狙い通りに仕留めた。

この日は、7勝無敗だったビーバーとの投げ合いだった。「なかなか点を取れない投手。とにかく自分が1点でも少なく投げることで、勝つ確率が上がるんじゃないかと思っていた」。両サイドへのスライダー、低めのチェンジアップに加え、ツーシームもバランス良く配球。5回には一塁線への投ゴロをバックハンドでトスする華麗なフィールディングを見せた。守備も含めた総合力で勝り、無敗のサイ・ヤング賞候補右腕に土をつけた。

インディアンス戦は今季3度目ながら、二塁を踏ませない投球で7三振を奪った。「この1勝はすごくチームにとっても大きいと思うので、いい登板になりました」。次回登板はア・リーグ中地区の首位ホワイトソックス戦となる見込み。リーグ最強右腕の次は、首位をたたく。【斎藤庸裕】