<ア・リーグ優勝決定シリーズ:レイズ4-2アストロズ>◇第2戦◇12日(日本時間13日)◇ペトコパーク

3年前の17年、アストロズで組織的なサイン盗みが行われた。電子機器を使い、ベンチからゴミ箱をたたく音で球種を伝達。同年のワールドシリーズを制覇した。胴上げ投手となったモートンはこの日、レイズの先発としてマウンドに上がった。アストロズの先発マクラーズを含め、両軍で当時のメンバー8人が先発出場した試合に潜入した。

ストライクやボール、安打や凡打だけでなく、ファウルで粘る打者の姿勢、守備の好プレーに互いが熱くなった。無観客の球場に響き渡る音は、両軍から送られる熱を帯びた拍手とかけ声だけ。ベンチで不審な動きもなかった。アルテューベ、ブレグマン、コレア、グリエルら17年のメンバー6人を擁した打線に対し、モートンは5回96球と苦しみながらも無失点。「野手がすごくいいプレーをしてくれた。全員で勝った素晴らしい試合」と喜んだ。

レイズの地元タンパベイ・タイムズ紙によれば、同投手は17年当時、味方のサイン盗みの事実を認識していた。今年2月のキャンプ前には「止めるために何かできなかったのか、後悔している」と語ったという。1月に不正が発覚して以降では、初めて古巣と対戦。前日に心境について「よく知る選手を相手に投げるのはすごく変な感じだね」と苦笑いで吐露した。

再三のピンチで粘り、好守にも助けられた。一方のア軍は好機を生かせず、凡退してヘルメットを投げつけた。1球の結果に、喜びや悔しさが飛び交う。野球で勝負に徹する、両者の純粋な心意気が見えた。(サンディエゴ=斎藤庸裕)