MLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが11日(日本時間12日)、全30球団に対し、今季の春季キャンプ、公式戦を予定通り行うため、準備するよう通達した。全国紙「USAトゥデー」が報じた。もっとも、この通達はあくまでも現時点での“建前”であって“本音”ではない可能性が極めて高い。

というのも、米国内では依然としてコロナ感染が爆発的に拡大しており、新感染者は10日の時点で1日あたり20万人超。キャンプ地フロリダ州で1万2000人、アリゾナ州で6000人を超えるなど、通常の感覚であれば、不要不急でなくても簡単には外出できる状態ではない。パドレスのダルビッシュ有が7日(同8日)、ツイッターに「スプリングトレーニングが1カ月ちょっとで始まるんですが普通に無理な気が」と投稿したように、不安視する声は数多い。

今回、球界トップの通達の裏には、選手会との駆け引きが見え隠れする。昨季来の大幅収入減に伴い、経費削減に必死なオーナー陣は、少なくとも1カ月の開幕延期案を提案。一方で、年俸の満額支給に固執する選手会は徹底抗戦する姿勢を崩していない。この年俸配分問題に加え、昨季採用された両リーグDH制、ポストシーズン枠拡大などを含め、双方の溝は深く、今後の折衝は一筋縄ではいきそうもない。

その先陣を切ったのが、コミッショナーが放った“ジャブ”。開催要項決定までの交渉が、再び、昨季のように泥沼化するような気がしてならない。【MLB担当=四竈衛】