レイズ筒香嘉智外野手(29)が日刊スポーツのインタビューに応じた。コロナ禍で異例のシーズンを強いられたメジャー1年目を踏まえ、2年契約の2年目となる今季への胸中を赤裸々に語った。【取材・為田聡史】

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デビュー戦初本塁打の心地よい感覚は、筒香の中に鮮明に残っている。7月24日、ブルージェイズ戦に「3番三塁」でスタメン出場。5回2死一塁、フルカウントから外角への89マイル(約143キロ)の速球を左中間席に運んだ。昨季ナ・リーグで最優秀防御率のタイトルを獲得した左腕、柳賢振からのメジャー初安打となる1号2ランだった。

筒香 あのホームランは良かった。形もいいし、心も良い状態だった。心身ともにすごくいい状態のホームランだなと。振り返ってみたら、あれが一番いいホームランだったし、あれ以外に納得がいくホームランはなかった。

打球の行方を追いながら駆けだした。1歩、2歩と踏みだし「すべて覚えている。打った瞬間に『行ったな』というのが分かった」。メジャーの舞台で自身の存在を誇示する1発だったが、心のバランスは保たれていた。「もちろんうれしい。でも、その感情が勝手に出ない。過去に勝手にガッツポーズが出てしまったこともある。それは興奮が勝ってしまっていた時。僕はプロ野球界の中でも表情を見せない方だと思っている。その状態があるってことは冷静でなおかつ、集中している状態」と当時の心境を思い起こした。

ダッグアウトに引き揚げるまで表情は引き締まったままだった。全身にこみ上げる興奮はあった。「全くないと言えばウソになる。ワクワク、興奮もあった。だけど、すごく冷静だった。ワクワク、興奮が勝っているわけではなかった。どれかが強かったという感覚はない」。こだわってきた流儀を貫いた。

あの1本から約半年が経過し、帰国後に今回の取材に応じた。デビュー弾を事細かに思い返し、熱っぽく力説した。情熱、興奮を隠さずに、冷静に当時の心境を明かした。