ともに白星にこそ届かなかったが、ダルビッシュ有と前田健太が日本人投手として史上初の同日開幕投手を務めたことは、特筆すべきことだった。

2人に共通するのは昨季ア、ナそれぞれのリーグのサイ・ヤング賞投票で次点となったことだけではない。ダルビッシュは、日本ハムからレンジャーズ移籍当時の担当だったパドレス・プレラーGMの強い要請の末、カブスで専属捕手だったカラティニとの“セット”に拡大してまで、パ軍とのトレードを成立させた。

ツインズが前田を昨年2月にドジャースから獲得したのは、先発投手としての本来の力を高く評価していたからだった。選手にとっての評価が年俸であることも確かだが、本当の意味で意気に感じるのは必要とされること。本気で世界一を狙う両チームに請われ、しかも開幕投手を任せられることは、野球選手冥利(みょうり)に尽きるに違いない。

その一方で、ともに苦しい時間も共有した。NPB時代に直接投げ合ったこともある2人が、17年7月末にダルビッシュがドジャースに電撃移籍したことで初めて同僚となった。先発の核となるダルビッシュに対し、前田は公式戦終盤、救援に配置転換された。それでも、前田は言った。

「まさか一緒のチームで野球ができるとは思わなかった。すごく尊敬している投手です」。

その年のワールドシリーズ第3戦では、2回途中4失点でKOされたダルビッシュを、前田が緊急救援した。ダルビッシュは、雌雄を決する第7戦でも2回途中で降板。後日、組織的なサイン盗みが告発されたアストロズが相手だったとはいえ、敗戦後の2人は憔悴(しょうすい)し切った表情で言った。

ダルビッシュ 失望というか…、自分の引き出しが足りなかったのがすべて。これをしっかり糧にできるようにしたいです。

前田 人として、投手として成長できたと思う。今後に生きるんじゃないかと思います。

失望や屈辱を糧にしつつ成長してきた2人が、期せずして同時につかんだ開幕投手。白星が付かなくても、その名誉が色あせることはない。【MLB担当=四竈衛】