【アナハイム(米カリフォルニア州)19日(日本時間20日)=斎藤庸裕】偉業達成は再び持ち越しとなった。エンゼルス大谷翔平投手(27)が、アスレチックス戦に「2番投手」で出場し、8回5安打2失点、108球を投げ10奪三振も勝敗はつかなかった。投手ではベーブ・ルース以来103年ぶりの「2ケタ勝利&2ケタ本塁打」まであと1勝。打者では本塁打王のタイトルを争う。この日、スプリットを多投し、バント安打を狙った二刀流大谷の胸の内を探ると、見えてきたのはさらなる成長を望む純粋な姿勢だった。

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勝利に貪欲な姿勢を示す大谷のバントだった。2点を追う6回無死、先頭で打席に立った。初球をバントし、一塁へ全力疾走。間一髪アウトで失敗に終わった。「トップ(バッター)だったので単純にヒットか、四球でも良かったですけど、まずは塁に出るというのが一番大事」。試合展開、状況を把握した上で自ら下した判断だった。

球団新のシーズン25本を放っている本拠地で、地の利もある。前日に復調の兆しを見せ、本塁打を打てるチャンスでもあった。だが「ぶんぶん個人的に振っていっても、しょうがないところ。一番(出塁の)確率が高そうなものをチョイスした」。ゲームを支配する二刀流選手として、目先の欲を捨てた。

8戦ノーアーチながら、44本塁打でゲレロ(46本)、ペレス(45本)らと熾烈(しれつ)なタイトル争いを繰り広げる。「とりたいなという気持ちはあるっちゃあります」とあえて口にするのは、単純に本塁打王獲得への意欲だけではない。「いい打者たちと競り合いながらやれること自体、まず少ない機会だと思う」とレベルアップへの経験値と捉える。

「甘い球の絶対数も少ないので、いい打撃ができる機会も、難しいかなと思いますけど、自分の成長のためだと思って、そこでも成績を残せるように工夫しながら頑張りたい」

バントで1打席を“犠牲”にしても、厳しい攻めが続いても、限られた中で結果を残すことが今後の成長につながる。打者大谷の揺らがない信念を示した。