エンゼルス大谷翔平投手(27)がまた1つ、メジャーの歴史にその名を刻んだ。

マリナーズ戦に「2番DH」出場し、1打数無安打4四球。球団によると、3試合で11四球は2016年のブライス・ハーパー(ナショナルズ)に並ぶメジャー最多記録。1点を追う9回には1死走者なしから歩かされるなど、連日の四球攻めで46号本塁打はお預けとなったが、大谷は変わらず笑顔のままだった。

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球史に残る強打者と同じように、宿命として受け入れるしかないのだろうか。ポストシーズン進出へ向け最後の正念場を迎えているマ軍に、大谷はことごとく勝負を避けられた。僅差の展開でもあり、ひと振りで流れを変えられる大谷は、脅威以外の何物でもない。一塁が空いていれば申告敬遠、空いてなければ徹底したボーダーライン上の出し入れ。4打席連続で一塁へ歩かされた。

ただ、大谷は本塁打王のタイトル争いで「四球禍」に巻き込まれているわけではない。前カードのアストロズ、今回のマ軍とも、一戦も落とせない戦いが続いている。危機管理の末、勝負を避けた結果だ。

大谷に1度もホームを踏ませなかったマ軍サービス監督にすれば、してやったり。「あれだけの本塁打を打ち、驚異的なシーズンを送っている打者。(我々にとって)2021年は特別なシーズンなんだ」と、6連勝でワイルドカード争いで3位タイに並んだ戦術の正当性を強調した。数々のユニークな戦術を披露し、カブス時代には大砲ハーパーを敬遠攻めした経験のあるマドン監督も、敵将の思惑に「ポストシーズンを争っているチームが相手であれば起こり得ること。彼らに信用を与えたい」と理解を示した。

タイトル狙いを宣言したものの、勝負を避けられた大谷は笑みを浮かべるしかなかった。故意死球も四球禍も、メジャーの戦術の一環。シーズンは残り8試合で、うち5試合がマ軍戦。今後も四球攻めが続く可能性はある。逆転での本塁打王へ、早い回で仕留めるか、一方的な展開に持ち込んで真っ向勝負に導くしかない。【四竈衛】

◆ハーパーの3試合11四球VTR 16年5月7、8日のカブス戦と9日タイガース戦の3試合で記録。特に中地区首位カ軍の敵地では、四球攻めに遭った。8日は延長13回で7度打席に立つも3四球3敬遠1死球。「0打数7出塁」はメジャー記録、1試合6四球は同最多タイだった。

敵将は皮肉にも、現エンゼルスのマドン監督。東地区首位ナ軍対策として、前年15年に42本塁打の初タイトルとMVPに輝いた23歳の主砲に対し、同5日からの4連戦計19打席で13四球(4敬遠)と勝負を徹底的に避けた。この秘策が功を奏し、このカード4連勝。名将の采配も光ったこの年、カ軍は108年ぶりにワールドシリーズを制した。