【アナハイム(米カリフォルニア州)26日(日本時間27日)=四竈衛、斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(27)がマリナーズ戦に「2番投手」で出場し、7回5安打1失点10奪三振と好投したが、勝敗はつかなかった。6回まで無失点と快投を続けていたものの、7回に同点ソロを浴びた。打者としては中前打1本で3打数1安打。交代時には、ベンチでバットをたたきつけるなど、珍しく悔しさを見せ、試合後は勝利への本能をのぞかせた。

白星が遠ざかった瞬間、いつもは顔色を変えない大谷でも、積もり積もった感情を抑えきれなかった。1-1と同点で迎えた7回裏、9番フレッチャーでイニングが終わり、交代が決まった後、ベンチで打席の準備をしていた大谷は、思わずバットをたたきつけていた。「勝てなかったこともそうですし、追い付かれたのも自分の責任だと思います」。試合後こそ、いつもと変わらない表情で振り返ったものの、一瞬だけ冷静さを失うほど、悔しさと鬱憤(うっぷん)が一気に噴き出した。

7回に同点弾を浴び、今季10勝目を逃し、ルースに並ぶ103年ぶり「2桁本塁打、2桁勝利」に届かなかったという理由だけではない。投打でフル稼働したメジャー4年目の、本拠地での今季最終戦。「いい形でホームを締めくくりたかったというのもありますし、今年1年間、フラストレーションがたまるような試合ばかりで申し訳ないという気持ちもあるので、来年以降、そうならないように頑張りたいと思います」。

自らの数字だけではなく、チームとして勝利を求める気持ちは、だれよりも強かった。トラウトら主力選手を故障で欠き、エンゼルスは後半戦に優勝争いから脱落。来季以降への巻き返しについて、「このままでは勝てないと思います」と、率直に言った。「もっと楽しいというか、ヒリヒリするような9月を過ごしたかったです」。タイトル争いに身を置くとはいえ、ポストシーズンへの思いには変えられなかった。

敗戦後、米報道陣から2023年オフにFA(フリーエージェント)となることに質問が及んだ際には、思わず本音を漏らした。「エンゼルスのファンも、球団の雰囲気も好きです。でも、それ以上に勝ちたい気持ちが強いですし、プレーヤーとしてその方が正しいと思います」。決して、将来的な移籍を前提にしているわけではない。ただ、二刀流の大谷は、単純に、投げたい、打ちたい、というわけだけではない。バットをたたきつけたのも、「勝ちたい」という野球人としての本能をのぞかせた一端だったに違いない。