エンゼルス大谷翔平投手(27)が、政府からの国民栄誉賞授与の打診を辞退していたことが分かった。松野博一官房長官が22日の記者会見で明らかにした。

大谷は大リーグ4年目の今季、打者で46本塁打、100打点、投手で9勝2敗、防御率3・18と投打二刀流で躍動。日本人として初めて満票でのア・リーグMVPに輝いた。

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大谷らしい判断だった。政府から届いた国民栄誉賞授与の話に、大谷側は「まだ早いので今回は辞退させていただきたい」と回答した。「まだ早い」と自分の未熟さを認めながらへりくだった。「今回は」と次回をにおわせ、再び打診してもらえるような活躍を約束した。

松野官房長官は打診した理由について「今年の活躍は国民栄誉賞に値する大変な活躍だった。祝意を表したかった」と説明した。成績だけでなく、コロナ禍の閉塞(へいそく)感でいっぱいの中、国民を勇気づけるプレーを連発した。国民栄誉賞級の活躍だったことは間違いなかった。

松野氏は会見で「さらなる高みに向けて、精進に集中するという強い気持ちと受け止めている」と言い「国民とともに来シーズン以降の一層の活躍をお祈りしたい」と今後に期待した。

大谷はすでに来季に向けて始動。トレーニングを続けている。この日はア・リーグMVP選出への祝意にこたえた。インスタグラムに英語で「祝福してくれた皆さん、ありがとう。温かい言葉やメッセージに感謝します」と掲載した。

過去に野球選手で国民栄誉賞を受賞したのは王貞治氏、衣笠祥雄氏、長嶋茂雄氏、松井秀喜氏の4人。辞退した人には福本豊氏やイチロー氏がいる。福本氏は「立ちションベンもできへんようになる」と独特の表現で辞退。3度にわたって辞退したイチロー氏側からの返答は「人生の幕を下ろした時に頂けるよう励みます」だった。

◆国民栄誉賞 1977年に本塁打世界記録を達成した王貞治選手(当時)の功績をたたえるために政府が創設。歴代内閣が政権浮揚に利用してきたとも言われる。これまで26人と1団体が受賞。作曲家の古賀政男、歌手の美空ひばり、映画監督の黒沢明、俳優の森繁久弥らも受賞している。(敬称略)

<過去の国民栄誉賞辞退者>

◆福本豊(1983年=中曽根内閣)ルー・ブロックの持つ大リーグ記録(当時)を上回る通算939盗塁を達成。「立ちションベンもできんようになるがな。国民の手本にはならへん。無理や」と辞退

◆古関裕而(1989年=海部内閣)「栄冠は君に輝く」「六甲おろし」「闘魂こめて」など作曲。8月に80歳で死去。遺族が「死んでから追贈されても」と辞退

◆イチロー<1>(2001年=小泉内閣)大リーグ1年目に首位打者とア・リーグMVPを獲得。「まだ28歳で発展途上。野球人生を終えた段階でいただけるよう頑張りたい」と辞退

◆イチロー<2>(2004年=小泉内閣)シーズン262安打で大リーグ最多安打記録を更新。首相官邸に自ら電話し「現役の間はいただくわけにはまいりません」と辞退

◆イチロー<3>(2019年=安倍内閣)3月に引退表明。打診に対して「人生の幕を下ろした時にいただけるよう励みます」