広島からポスティング制度でメジャー移籍を目指す鈴木誠也外野手(27)が13日(日本時間14日)、パドレスと基本合意したことが分かった。

昨年11月の申請後、8球団以上の争奪戦となり、鈴木の希望条件を満たしたパ軍が勝利した。5年契約で総額7000万ドル(約80億5000万円)前後となる見込みで、日本人野手1年目としては最高契約となることが確実となった。

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東京から広島を経て、日本の4番となった鈴木の新天地は、米西海岸最南部の港町に本拠地を置くパドレスに決まった。昨年12月2日からロックアウト(LO、業務停止)が続き、入団交渉が凍結してきた間も我慢強く、慎重に移籍先を熟考してきた。LO前の交渉第1ラウンドでは、少なくとも8球団とオンラインで折衝。愛理夫人も同席し、積極的に質問するなど、ベストの条件を探った。鈴木が求めたのは、(1)家族が安心して暮らせる環境、(2)ポストシーズンを争えるチーム、(3)温暖な気候。条件をすべて満たし、誠意のあるプレゼンテーションでアピールしたのが、パ軍だった。

当初予定では、LOが解除され次第、鈴木も渡米。第1ラウンドで出遅れたヤンキースなどとの初折衝を含め、各球団の施設見学と交渉第2ラウンドを並行するプランもあった。ところが、労使交渉が長期化し、移籍交渉が再開されたのは米時間10日夜。その間、代理人ジョエル・ウルフ氏らと絞り込みを進める中、有力候補の1つだったマリナーズは、三塁手補強のためブライアント内野手(ジャイアンツFA)にシフト。最終的にはパ軍、カブス、ジャイアンツの3球団に絞られ、最良の条件を満たしたパ軍が、鈴木のハートを射止めた。

条件面では5年契約を基準に、24年の3年目オフにオプトアウト(契約破棄)できる条項や、5年目の26年オフには球団または選手側がオプション(契約延長の選択権)を持つ項目について折衝。年平均1400万ドル(約16億1000万円)をベースに、総額7000万ドル前後で大筋合意したものとみられる。このほか、複数球団へのトレード拒否権、専属トレーナー、家族の日米間の往復チケット補助など、多項目に及ぶ付帯条件についても最終調整段階に入った。

鈴木はすでに米国入りしており、本拠地ペトコパークなどの施設見学も済ませている。身体検査がクリアされ次第、近日中にも入団決定が正式発表され、キャンプ地のアリゾナ州ピオリアに合流する予定。開幕すれば昨季本塁打王のタティス、年俸約37億円のマチャドとともに、中軸を任される可能性が高い。エース格のダルビッシュ有投手(35)の後ろで守り、バットでも援護する勇姿が数多く見られそうだ。

◆パドレスの外野手事情 昨季155試合に出場した左翼手ファムがFAとなり、現状では外野が1枠空いている。鈴木が右翼に入れば、中堅は引き続きグリシャムが守り、マイヤーズが左翼に移る見込み。13年の新人王マイヤーズは17年に30本塁打を放つも、昨季は17本塁打にとどまった。主に1番打者を務めたグリシャムも15本塁打で、強打の外野手が補強ポイントに挙がっていた。今季からDH制が採用されるため、内外野を守れるプロファーらを絡めながら、外野守備をローテーションで回す可能性もある。

 

○…契約前から米国入りしている鈴木は、メディカルチェックを済ませて正式契約となる。入団会見は、キャンプ地のアリゾナ州ピオリアで行われる見込み。そのままキャンプ地に滞在しチームの練習や、練習試合には参加ができる。しかし、オープン戦出場にはビザ取得が必要で、1度出国し、近隣のカナダやメキシコでビザ申請手続きを行う。同地で数日過ごしてビザ取得後、再びキャンプ地でチーム合流となるのが一般的な流れとなる。

 

◆サンディエゴ・パドレス ナ・リーグ西地区。1969年のリーグ拡張で誕生。本拠地ペトコパーク。チーム名は「神父」の意。地区優勝5度、リーグ優勝2度(84、98年)もワールドシリーズ優勝はない。昨年はダルビッシュ有が開幕投手を務めた。日本選手では過去に大塚晶文、井口資仁、牧田和久が所属。チームの顔は昨オフに14年契約を結んだフェルナンド・タティス内野手(23)。今季からボブ・メルビン監督(60=前アスレチックス監督)が指揮を執る。昨季79勝83敗で地区3位。通算3863勝4495敗、勝率4割6分2厘。

◆パドレス今季日程 公式戦は4月7日(同8日)に開幕。4連戦でダイヤモンドバックスの敵地に乗り込み、本拠地お披露目は14日(同15日)からのブレーブス4連戦。いきなり14連戦というタフなシーズンに突入する。ア・リーグとの交流戦はツインズなどの中地区勢と、キャンプ地ピオリアを同じにする関係でマリナーズ戦も2カードある。最終カードは9月30日(同10月1日)から本拠地でのホワイトソックス3連戦。オープン戦は3月18日(同19日)からスタート。23日(同24日)にはキャンプ地のピオリアで、同学年の大谷翔平投手(27)らが所属するエンゼルス戦が組まれている。

◆ペトコパーク(Petco Park) 04年に開場。左翼102メートル、中堅121メートル、右翼98メートル。右中間、左中間が広く、投手有利な球場で知られる。12年に右中間を狭くする工事が行われた。海からの潮風の湿気でボールも飛びにくい。左翼には金属メーカー「ウエスタン・メタル・サプライ」の旧本社社屋を残し、ビルの角が左翼ポールになっている。06年は第1回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準決勝、決勝が行われ、09年の第2回大会も2次ラウンドで日本戦が行われた。「ペトコ」はペット用品販売会社。