【ロサンゼルス(米カリフォルニア州)15日(日本時間16日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(27)が、最終打席でノーヒットノーランの快挙を阻止した。「3番DH」で出場したドジャース戦の9回1死、左腕アンダーソンからチーム初安打となる三塁打。同投手の123球目で夢を打ち砕いた。この日は始球式を行った俳優の渡辺謙(62)が観戦。映画「ラストサムライ」でも知られ、日米で活躍する名俳優の前で、大谷が最後に二刀流侍の意地を見せた。16日(同17日)は敵地シアトルでマリナーズ戦に先発する。

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鳴りやまない大歓声の中、大谷が打席に入った。9回1死までノーヒット。観衆5万人超のドジャースタジアムは、左腕アンダーソンへの期待感で充満した。だが、熱気に満ちた空気を二刀流のサムライは一太刀で斬った。「なんとか塁に出て、ヒットじゃなくても四球でもいいですし、塁に出たいなと思ってました」。初球の甘いカットボールを捉え、右翼線へのライナーがフィールドで弾んだ。全力疾走の三塁打。これが、チーム初安打となった。

123球目で、ようやく攻略した。昨年は3打数3安打。シーズン最終戦でも46号本塁打を放ったが、打ちあぐねた。「全体のバランスで勝負するタイプの投手。リズムも良かったですし、ドジャースの攻撃とのリズムもかみ合っていたと思うので、なかなか難しかった」。各球種をコーナーに散らされ、配球の33%を占めたチェンジアップにも苦戦。回が進むごとに歓声が大きくなった。だが、クライマックスでノーヒットノーランを阻んだ。

この日、始球式を行った俳優の渡辺謙はドジャースファンとして、この瞬間を見守っていた。快挙は見られなかった一方で、二刀流の勇姿を目撃。ラストサムライでトム・クルーズと共演し、ハリウッドに名を刻んだ名優も試合前、感心していた。

「未知なるものにずっと挑戦し続けるということに関してはシンパシーを感じますし、その中でいろいろ、いい時もあれば悪い時もある。いろんなことを含めて、頑張って挑戦し続けるっていうことは、やっぱりすごいと思います」

大谷は第3打席まで凡退。だが、最後の最後、ラスト打席で、諦めないサムライ魂を見せつけた。

今季最長の10試合連続安打をマークした一方で、チームは2安打1得点で完敗。3連敗を喫した。試合後に敵地シアトルへ移動し、翌日のマリナーズ戦には大谷が先発。登板前日の最終打席に三塁打を放ち、ネビン監督代行から状態をやや心配されていたが、「いつも同じなので、1日1日、1打席1打席、集中して頑張りたいなと思います」。変わらず、全力で走り続ける二刀流。生きざまが見えた、ラスト打席だった。

◆ラストサムライ 03年12月に公開されたハリウッド映画。明治維新後、日本を西洋化するために来日した南北戦争の英雄と武士道精神を貫く侍が強いきずなで結ばれていくストーリーを描いた。トム・クルーズが主人公でネイサン・オールグレン大尉を、渡辺謙が政府に反する士族のリーダー、勝元盛次を演じた。日本人俳優は他にも真田広之、小雪、池松壮亮らが出演した。04年の日本公開映画の興行成績で1位。

▽ドジャース・アンダーソン (9回は)プレーオフのような大きな舞台と感じていた。(直接捕球が難しそうな大谷の打球へ飛び込んだベッツの右翼守備に)笑ってしまった。とてもいいジェスチャーだった。

▼大谷が4日フィリーズ戦から10試合連続安打。大リーグ移籍後、10試合以上の連続試合安打は3年ぶり2度目。19年8月10~20日にマークした自己最長の11試合にあと1試合で並ぶ。

▼大谷は日本ハム時代、14年5月10日オリックス戦(ほっともっと神戸)の8回無死一塁で代打出場。ディクソンからチーム初安打となる右前打を放ち、ノーヒットノーランを阻止している。