セイヤは足も神っていた-。左手薬指痛で負傷者リスト(IL)入りしていたカブス鈴木誠也外野手(27)が4日(日本時間5日)、敵地ブルワーズ戦に「4番右翼」で出場し、39日ぶりにスタメンで復帰。、同点で迎えた9回には、一時勝ち越し点となる日本人メジャー通算3本目となるランニング本塁打を放つなど、4打数2安打1打点と元気な姿を披露した。試合は延長サヨナラ負けを喫したものの、満を持して復帰した鈴木が、あらためて存在感を示す一戦となった。

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米国独立記念日の7月4日。夏休みに入り、敵地ミルウォーキーながら、約230キロ離れた本拠地シカゴから数多くのカブスファンが大挙した。メジャー特有の風景を、鈴木は久しぶりの高揚感を胸に秘めつつ、冷静に見つめていた。「久々のメジャーの試合でしたし、楽しみながらやろうと決めて入った。ようやくこの舞台でまた野球ができるという喜びもあった」。

7回の第3打席に右前打で復帰後初安打。気持ちは、少しだけ楽になっていた。1-1の9回。相手は昨季途中から今年6月5日までメジャータイ記録の40試合連続無失点を記録したブ軍の絶対的クローザー、左腕ヘイダー。時速95マイル(約153キロ)の速球を捉えた打球は、左中間フェンスを直撃した。不規則に跳ね返った打球が外野を転々とする間に快足を飛ばして本塁へ生還した。日本人メジャー通算3本目のランニング本塁打が生まれた。

「何とかアウトにならなかったので良かった」と苦笑い。それでも常に次の塁を狙う意識の強い広島で培った走塁センスが際立った。打球の行方を確認しながら一塁ベースを蹴り、クッションボールが逆方向に向かったのを確認すると、50メートル走6秒前後の俊足を、一気にトップギアへ。各ベースの内側を蹴り、無駄に膨らむことなく、最短距離で疾走した。最後は、捕手の捕球姿勢を瞬時に判断し、体をねじりながら左手でベースに触れる完璧なスライディング。150メートル近い豪快アーチ以上に、ファンだけでなく、同僚にもインパクトを残す1発だった。

敗れたが、快足で稼いだ5号は4月17日以来。復帰戦前にロス監督に「このチームでまた1戦1戦勝っていきたい」と思いを伝えていた。カ軍は低迷気味だが、まだ折り返し直前。鈴木が、ダイヤモンド1周15秒41の疾走で再出発した。

◆英語では ランニング本塁打は和製英語で、英語ではINSIDE-THE-PARK HOME RUN(インサイド・ザ・パーク・ホームラン)。

▼カブス鈴木がランニング本塁打。ベース1周のタイムは15秒41で、MLBの今季ランニング本塁打7本では3位に相当する。スタットキャストが計測を開始した15年以降、球団では3本目で最速。9回以降の勝ち越しランニング弾は63、68年ビリー・ウィリアムズ以来、球団拡張となった61年以降3本目。

▽カブス・ロス監督(鈴木に)「とてもエキサイティングだった。戻って来てうれしいし、いいスイングをしていたね。最初の試合でランニング本塁打なんて、とても印象的だった」