セイヤの打棒が止まらない。前日、左手薬指痛から復帰したばかりのカブス鈴木誠也外野手(27)が5日(日本時間6日)、ブルワーズ戦に「4番右翼」でフル出場。2戦連発となる6号決勝2ランを含む5打数2安打3打点と活躍し、カ軍の逆転勝利に貢献した。前夜のランニング本塁打に続き、1カ月以上の空白を埋めるかのように、メジャーのフィールドで躍動した。

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全身から汗が噴き出すほど、15.41秒で全力疾走した前夜とは一転した。一塁ベースを蹴る直前、打球の落下点を確認した鈴木は走る速度を緩め、ゆっくりとダイヤモンドを回った。

2-2と同点に追い付き、なお5回1死二塁の好機で迎えた第3打席。ブルワーズの先発アレクサンダーの初球、時速92マイル(約148キロ)の内角シンカーを振り抜き、左翼ポール際へ勝ち越しの2ランをたたき込んだ。「(相手の)得意球はツーシーム(シンカー)。あの球を狙っていた。スライダーが来たら仕方ないと割り切っていた。うまく打てたので良かった」。コースはややボールゾーンでも、的確な「読み」で、コンパクトな一振りの勝ち越し打につなげた。

第4打席には、救援左腕スーターの外角チェンジアップを左手1本で拾うように左前適時打。貴重な追加点を挙げた。試合後、地元シカゴのテレビ局のヒーローインタビューに呼ばれ「(本塁打は)何とか入ってくれて良かったです。インサイドを攻められていたので、多少なりとも頭に入っていましたし、打てて良かったです」と、会心の一打を振り返った。

負傷者リスト(IL)から登録されたた前日、敗れたとはいえ、5号ランニング本塁打を放った鈴木の復帰に、カ軍は「歓迎モード」に包まれていた。数週間前、松下登威(とうい)通訳が関係者を通してもらって着用していた「誠也の親友」と漢字でプリントされたTシャツを、3番ハップらが試合前の練習で愛用。チームは地区4位と低迷するものの、鈴木の復帰は、間違いなく上昇への起点と期待されていた。

昨季途中、リゾ(現ヤンキース)ら高年俸の主軸選手を放出し、世界一への3年計画に方向転換したカブスにとって、今季は再建への第1歩。その過程の軸となる鈴木の豪快な復活劇こそ、シカゴのファンが求めていたものに違いない。

▼鈴木が5回に決勝点となる勝ち越し2ラン。4番で2戦連発した日本人選手は18年大谷(エンゼルス)が8月25、27日に打って以来。大谷以外では松井秀(ヤンキース)が04年2度、09年1度記録しており、鈴木で3人目。また、4番でVアーチを記録したのは、20年8月6日マリナーズ戦の大谷以来。こちらも記録しているのは松井秀(3度)と大谷(3度)だけで、鈴木が3人目(7度目)。