【シアトル(ワシントン州)27日(日本時間28日)=水次祥子】マリナーズの球団会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー氏(48)の球団殿堂入りのセレモニーが、本拠地Tモバイルパークで行われた。4万5000人を超えるファンで埋め尽くされた中、紺色のスーツ姿で登場し、英語で15分を超えるスピーチ。笑いあり感動ありの内容に、何度も大きなイチローコールが響き渡った。式典にはケン・グリフィー・ジュニア氏(52)やエドガー・マルティネス氏(59)ジェイミー・モイヤー氏(59)ら元同僚のレジェンドも出席。元レッドソックスの松坂大輔氏(41)やエンゼルス大谷からのビデオメッセージも届き、マ軍10人目の栄誉に、球場は祝福でつつまれた。

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What’s up, Seattle?(シアトル、元気かい?)

22年前にマリナーズの一員になったとき、僕の人生は一転しました。27歳でシアトルに来て、アメリカでの現役生活が19年も続くとは想像できませんでした。そして今まだ、シアトルにいるということもです。

野球は私にとって、永遠の魂であり、僕の使命は選手とファンが、この特別なスポーツを楽しめるよう力を尽くすことです。

今日来てくれた元同僚3人、ジュニア(グリフィー)、エドガー、モイヤーには支えてもらいました。そしてここにいる弓子。彼女がいなければ、今日このような栄誉を受けることは不可能だったと思います。彼女は僕と一緒に、あらゆる困難に立ち向かい、この瞬間にたどり着くまでの道のりを歩いてくれました。

長年通訳を務めてくれたアレン・ターナーにも感謝します。今日は彼の家族もこの場に来てくれて、うれしく思っています。彼は家族みんなで、最初から最後まで、僕の大きな支えになってくれました。

ルー・ピネラ(デビュー当時の監督)は今日、来られなくて残念です。僕がチームに入って最初に勝利したとき、彼は僕の頬にキスをしてきました。ショックでした。正直、怖かったです。アメリカではこれが当たり前だとしたら、僕はここでやっていけないかもしれないと思いました。その年、僕らは116勝しましたが、監督から116回のキスを受ける心の準備はできていませんでした。

ジュニア、彼は僕がメジャーに来る前からの憧れの選手でした。彼は冗談ばかり言いますが、真のプロフェッショナルでもあります。言葉で言い表せないくらい多くのサポートをしてもらいました。彼と一緒にプレーしたことは、僕の野球人生の大きな出来事の1つです。

今の選手たち、想像できないほどの可能性が君たちの未来に待っています。自分の持っている可能性に制限をかけず、ベストを尽くすことでそこに到達できます。日本から来た痩せっぽちのヤツがこのメジャーのユニホームを着て戦い、今夜ここで、この栄誉を受けているのです。君たちが同じようにやれない理由はどこにもありません。

そしてファンのみなさん。21年前に新人だった僕に、大きな声援を送ってくれ、その声援は消えることはありませんでした。18年に復帰したとき、熱烈な歓迎をしてくれたことに心を打たれました。野球人生の最高の思い出の1つです。そのときの気持ちは、一生忘れません。

◆球団殿堂 球団が独自に定める顕彰制度。在籍時に活躍した選手に限らず、専属アナウンサー、監督ら球団首脳、GMらフロント幹部も対象。世界初のプロ球団のルーツを持つレッズは、本拠地隣接の球団殿堂博物館で81人を顕彰。永久追放により米殿堂入りを閉ざされた歴代最多4256安打のピート・ローズ氏はレ軍で殿堂入り。複数球団で殿堂入りした選手もおり、ケン・グリフィー氏はレ軍とマリナーズで殿堂入り。イチロー氏はマ軍10人目の球団殿堂入りで、25年に米殿堂入り資格を得る。