【アナハイム(米カリフォルニア州)29日(日本時間30日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(28)が“MVP級”のパフォーマンスを見せつけた。、アスレチックス戦に「3番DH兼投手」で出場し、8回2死まで無安打を継続。ノーヒットノーランは逃したが、8回無安打2失点、10奪三振で日米通じて最多タイの15勝目を挙げた。打者では4打数2安打1打点で14試合連続安打をマーク。規定投球回までは残り1イニング。予定されている10月5日(同6日)の最終戦に登板し、史上初の投打ダブル規定到達の快挙でシーズンを締める。

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大谷が1球投げるごとに、スタジアムは熱狂に包まれた。8回2死、2ストライク。3万1293人の観衆が一斉に立ち上がった。誰もが息をのみ、期待を膨らませる中、大谷は腕を振った。だが、外角への決め球スライダーが、やや浮いた。「打たれたなっていう…。はい。コンタクトされたかなと。ちょっと高かったのが悔やまれるところ」。球足の速い打球で遊撃手ソトを強襲する安打となり、思わずほおが緩んだ。

6回前後からアウトの度に大歓声が上がり、7回以降は「MVP! MVP!」の合唱も起こった。大記録を逃しても、鳴りやまない拍手。8回を終えると、観客席からスタンディングオベーションでたたえられた。「三振をとってベンチに戻るのがチームにとっても、ファンの人にとっても、自分にとってもベストな答えだと思うので、それが出来なかったというか、最後、ピンチを作ってしまったというのは、もう少し、足りなかったところかなと」。理想のイメージにはならなかったが、完全燃焼、やり切ったような表情でフィニッシュした。

もっとも、立ち上がりは先頭に四球を与え、直球が走らなかった。「出来的にはあまり、まっすぐも速くなかったですし、調子自体もそこまで(いい状態)ではなかった」。平均球速は2マイル(約3・2キロ)減速。それでも「曲がりは小さいけど、コマンド(制球)はいい日もあるので、いいところをチョイスして選んでいくっていうのが、一番大事」と、スライダー主体で押し切った。球速や変化量を自在に変えながら、8回108球の熱投。4戦4勝で、自己最多タイの15勝まで勝ち星を積み上げた。

打者では1回に中前適時打を放ち、14試合連続安打をマークした。投手では規定投球回まであと1イニング。史上初の投打でダブル規定到達は目前だ。今シーズン残り6試合。最終戦に登板する見込みで、「1イニングでも多くゼロを並べていくのが一番、ファンの人にとっては盛り上がるところではあると思う。打席に関しては、いい打席でいい結果を出せるような準備を多く出来れば」。最後まで、全力の二刀流でいく。

○…ネビン監督代行が試合後の会見で、地元LAタイムズの女性記者を見て笑った。「君のことを思い出したよ」。試合前、同記者から大谷が完全試合を達成する可能性について質問をされていた。それがあった影響で「普段は考えないが、ショウヘイの1球目から、そのことを考えていたよ」と明かした。いきなり四球で完全試合はならなかったが、8回2死まで無安打。「7回を終えて、ノーヒッターはできると思っていた。次回に持ち越されたけど、非常にいい夜だった」とうれしそうに振り返った。

▽エンゼルスの二塁手フレッチャー「彼の後ろで守っているのが楽しかった。(8回の初ヒットは)どんな内野手でもタフなプレーだった。4回からノーヒッターだと気付いて、その後の試合は興奮しながらプレーしていた」

▽エンゼルスのトラウト外野手「後ろで守りながら見ているのは楽しかった。スライダーだけでも5~6種類を投げているように見えた。クールだったよ。みんなノーヒッターを達成すると思っていた。MVP論争はばかげていると思う。彼は5日に1度登板してこうしてこんな投球をやってのけ、年100打点と35~36本塁打をマークし、ジャッジ(ヤンキース)は記録を作っている。どちらも野球界にとって素晴らしいこと」