【シカゴ(米イリノイ州)29日(日本時間30日)=斎藤庸裕】野球の最高峰メジャーリーグで、勝負には結果がつきまとう。だが、それだけでは語れないドラマや戦いがある。エンゼルス大谷翔平投手(28)がホワイトソックス戦に「3番DH」で出場し、4打数無安打。チームは逃げ切り、連敗は3で止まった。この日、最もスタジアムが盛り上がったのは8回だった。

一昨年のセーブ王でホ軍の右腕ヘンドリックスが今季初登板。大歓声と拍手を浴び、マウンドに上がった。最初に対戦した打者タイスは打席を外し、制限時間内に投球する必要があるピッチクロックの秒数表示も消えた。粋な計らいで時間をもらったヘンドリックスはマウンドから球場を見渡し、感慨に浸っていた。

今年1月にリンパ球のがんの1種で悪性の「非ホジキンリンパ腫」を患っていることを公表。闘病を経て復帰し、エ軍ベンチからも拍手を受けた。「立ち上がって拍手をくれたみんなに感謝している。多くのことがあったし、もちろん、感情的になった。大きな意味があった」と語った。

1イニングを3安打2失点。最後は大谷を遊ゴロに打ち取り、特別な復帰戦を終えた。大谷とは21年から2年連続、オールスターで交流を深めた。昨年はシーズン中にエンゼルスタジアムでも再会し、談笑した。リーグを代表するクローザーと二刀流。ともに、高め合うライバルであることは変わらない。この日、打席に立つ大谷は敵地のファンから拍手で歓迎された。ヘンドリックスは、復帰をスタンディングオベーションで迎えられた。結果だけでは語れない光景も、野球の醍醐味(だいごみ)だ。