<マリナーズ4-3アスレチックス>◇28日(日本時間29日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(34)の張本超えは来季にお預けとなった。今季最終戦のアスレチックス戦で2安打に終わり、張本勲氏のプロ野球記録3085安打に2本届かなかった。シーズン安打ではダスティン・ペドロイア内野手(25=レッドソックス)に並ぶ213本でリーグ最多で3年連続5度目で、3年連続両リーグ最多は史上初になる。

 ラストゲームでプロ野球記録に挑む気持ちが第1打席からバットに乗り移った。追い込まれた2-1のカウントからの4球目、アウトマンの球速約134キロの内角スライダーを強振した。打球は初秋の青空に高々と上がり右中間フェンスを直撃する二塁打となった。しかし続かない。第2打席は遊ゴロ、第3打席は投失に終わった。「2つ目で出なかった時は『あ、ちょっと超すのはしんどいな』と。で、3つ目は『あ~並ぶのもしんどいな』って」。それでも気持ちは切らさなかった。

 先頭で回った7回の第4打席、外角速球に両手を伸ばすようにバットを出して遊撃へ転がし、内野安打を稼いだ。1点リードの展開で新たな打席は回らず張本超えの夢はついえた。並ぶには2本、超えるには3本足りなかった。

 「なんか慰謝料で折り合いのつかない離婚したい夫婦みたいな感じかな。ずるずると引きずってるみたいな感じ、なんでしょうかね。僕は分からないですけど、想像なんで」。大記録達成を来季へと持ち越す複雑な思いを例えた。だが、今季の歩みには「最後まで集中させてもらったのはその数字のおかげなんで、そこはやっぱり張本さんに感謝しますよ」と充実感が漂っていた。

 日米通算3000本安打、8年連続200安打を通過し、史上最速の1277試合で到達したメジャー1800本安打と記録のハードルが横たわった08年。最終的に出した結果は、ペドロイアと2人でのリーグ最多213安打だった。「僕はナンバーワンになりたい人ですから。オンリーワンの方がいいなんて言ってる甘いヤツが大嫌いなんで僕は。競争の世界ですから」。実は213安打は両リーグ最多で、3年連続はNO・1になる。

 「ずっと記録を追っていたのに、何かに追われているイメージがずっと付きまとっていた。疲れた」。自己2度目の162試合全出場を果たしたイチローは、いくつもの感慨を胸にメジャー8度目のシーズンに別れを告げた。