【ボルティモア(米メリーランド州)14日(日本時間15日)=大塚仁】大リーグ・オリオールズと2年契約を結んだ上原浩治投手(33)が、記念すべき大リーガー初日に異例のハード練習を敢行した。正午から本拠地オリオールパーク内で会見に臨み、100人近い日米報道陣にユニホーム姿を披露。終了後には氷点下のグラウンドに飛び出して意欲の「立ち投げ」も行った。2年総額1000万ドル(約9億円)、出来高込みで最高1600万ドル(約14億4000万円)の契約に応えるべく、球団初の日本人選手として勢いよくスタートを切った。16日、帰国予定。

 スーツを脱ぐとすぐにグラウンドへ飛び出していった。入団会見のセレモニーが終わると、トレーニングウエア姿で外野フェンス沿いを走り始めていた。最高気温はマイナス1度。球場には日本から帯同した練習相手の2人だけ。夢だったメジャーの球場をぜいたくに、存分に味わった。

 30分のランニングを終えると外野の芝生で最長約80メートルのキャッチボール、遠投を約70球。次には約25メートルに距離を縮めて7、8割程度の力で「立ち投げ」を始めた。速球に加えてフォークやシュートなど約50球を投げ込んだ。変化球は練習相手がたびたび捕り損なうキレの良さ。数十分前には撮影用にマウンドから山なりのボールを投げたが、意味合いも迫力もまったく違う「メジャー初投げ」だった。日本では「この10年ではいつもより早く始動している」と言うように、11月27日に始動、即戦力という立場を自覚している。メジャー1年目への意気込みの表れだった。

 入団会見は伝統ある球団のスタッフが「球団史上最大級」とまで評する大規模なものだった。日米合わせて100人近い報道陣に加え、正午からとあって昼休みの職員が総出で会見場に押し寄せた。地元テレビ局「MASN」が周辺のワシントン、バージニア、デラウェア、ペンシルベニアの各州に生中継する中、背番号19のユニホームに袖を通し、第一声で「興奮しています」と顔を上気させた。契約書にサインし、マクフェイル球団社長と握手を交わすと拍手がわき起こった。

 強豪ひしめくア・リーグ東地区に飛び込むことも闘志をかき立てる。「やりがいはかなりあると思う。優勝が義務づけられて、負ければぼろくそに言われる巨人とは立場が違う球団。今は挑戦者だけど、逆に気持ちが高ぶってくる」。オリオールズは昨季は地区最下位に沈み、98年から11年連続で勝率5割以下。だがそうした状況で強敵を倒すことこそ、「雑草魂」を身上とするだけに望むところだった。

 会見の最後に大リーグでの目標を問われると「勝つことです」と一言で締めくくった。数字こそ出さなかったが「200イニングってやっぱり大変なのかなあ。1年目でそこまでいったら最高。目指して頑張る」と言っていたイニング数にもこだわる。「10年前の大学時代みたいな感じに今あると思う」とも言った。無名だった大体大から巨人入りし、勝って勝って勝ちまくったプロ1年目の99年から10年。原点回帰した右腕のハートには、開幕が待ち切れないほどすでに激しい火がついている。