【シカゴ(米イリノイ州)10日(日本時間11日)=四竈衛、佐藤直子通信員】今季限りでヤンキースと契約が切れる松井秀喜外野手(35)が、あらためてヤ軍キャッシュマンGMから外野手としては「NO」を突きつけられた。難航が予想されるヤ軍との残留交渉は進展を見せておらず小康状態。退団する場合には他球団の争奪戦は必至だが、エンゼルスが本格参戦の構え。レッドソックスに続き、松井の実力と人気を必要とするヤ軍のライバル球団が名乗りを上げることが確実となった。

 ワールドシリーズでMVPを獲得した松井だが、ヤ軍キャッシュマンGMの言葉は厳しさを増した。GM会議2日目のこの日、同GMは松井の代理人テレム氏との交渉に進展がないことを明かした上で、「今はチーム全体の総年俸などを煮詰めている段階。複数のパターンを用意しているところで、個人的な話には至っていないよ。(11日までの)GM会議中に話し合うことはない」と話した。

 松井の残留について「彼は打点マシンだし、特別な選手」と尊重したが、仮に来季開幕までに松井のひざの状態が良くなったとしても「他球団がどう考えるかは知らないが、ウチでは指名打者だけ。(外野手としてのチャンスは)ない。その信頼はなかった」と前日に続いて強い口調で明言した。地元紙のアンケートでニューヨークの7割近くのファンが、松井残留を希望している。しかし、同GMは「僕も松井のことは大好き。だがファンの声は浮き沈みするものだ。(交渉と)別のものだ」と、シビアな姿勢を変えることはなかった。

 もっとも他球団は外野手としても評価している。エンゼルスのリーギンスGMは「彼は全試合は無理でも、しっかりと守れる外野手だと思う」と話し、FAのゲレロ外野手が退団した場合、松井獲得へ動くことは確実な情勢だ。通算407本塁打の実績を持つゲレロも今季故障に苦しんで、100試合出場で15本塁打、50打点に終わった。外野手としてはわずか2試合しかプレーできず、松井以上の1500万ドル(約13億5000万円)の高年俸が、残留のネック。同GMは「ゲレロには残ってほしいが、どうなるか分からない」と説明した。

 ヤ軍と決裂して移籍となった場合、松井の選択肢にエ軍は入ってくる。爆弾を抱える両ひざの状態を考えれば、カリフォルニアの温暖な気候は最適で住居環境も整う。今季リーグ優勝決定シリーズでヤ軍に敗れたが、3年連続ア・リーグ西地区を制覇。バントやエンドランなど細かい野球を展開するソーシア監督は、チームバッティングができる松井を評価している。今季左翼を守ったリベラはフル出場できず、レギュラーポジションも空いている。

 メジャーのストーブリーグは当該球団だけでなく、全球団の中でパズルの穴を埋め合う作業。松井獲得に動く方針のレッドソックスにしても、左翼手ベイが退団することが大前提となる。今後、松井とヤ軍の交渉がまとまらずゲレロも退団した場合、西海岸の強豪が松井獲得の最有力候補となる可能性は、極めて高くなってきた。