<ヤンキース9-5マリナーズ>◇21日(日本時間22日)◇ヤンキースタジアム

 【ニューヨーク=木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(36)がヤンキース戦で2打席連続本塁打を放った。1回にメジャー通算32本目の先頭打者アーチを記録すると、3回にも2打席連続の5号ソロ。1試合2発は昨年5月15日以来5度目で、敵地では8年ぶり。9回にも相手の守護神リベラから安打を放ち、今季50度目の複数安打で200安打まであと41本とした。

 イチローは見逃さなかった。2本塁打は、いずれもヒッティングカウントから、捕手ポサダの構えたミットとは反対の高さとコースに来るチェンジアップ。初回第1打席はカウント0-2から外角に浮いた3球目を、続く3回の第2打席はカウント0-1から外へ逃げきらない2球目を踏みこんで振り抜いた。2発とも痛烈なライナーとなり、ヤンキースファンが陣取る右中間席へ飛びこんだ。

 敵地での2連発は、02年7月13日にレイズのトロピカーナフィールドで記録して以来8年ぶり。ヤンキースタジアムでは初となった。ところが新“聖地”での快挙には、さしたる感情がわいてこない。「普段なら入らないのに入るのは特別だよ」と、右翼から右中間にかけて狭い独特の形状に触れたぐらい。それも09年に開場した新スタジアムの客層の変化によるところが大きい。熱くどぎついヤジを容赦なく浴びせてくるファンが減った。昨年のイチローは物足りなさを感じ、捕ったボールをスタンドに投げ入れる構えからグラブにしまう挑発行為まで見せた。

 この日も自軍の3番ブラニャンが右翼3階席に超特大弾を放ったが、敵側の打球はフィールドに投げ返す反骨のルールは順守されることなく、捕球した観客は手放さなかった。「おととしとは違いますね。お客さんの層が変わられましたからね」とイチローはあらためて実感した。

 もっとも、ピンストライプに身を包んだ難攻不落の好敵手リベラとの一騎打ちには変わらぬ感情がある。「そりゃ、他とはもちろん違いますよね。最も難しい1人であることは間違いないですね」。9回の最終打席、リベラは投じた7球すべて得意のカットボールで挑み、イチローはバットをへし折られることなく内角球を技で左前に運んだ。「意地?

 っていうか、ないケースってあるのかな」。4万8158人のファンで満員に膨れ上がっても、かつての空気が流れないブロンクスで、イチローは自分の打撃を楽しんだ。