<ヤンキース10-0マリナーズ>◇22日(日本時間23日)◇ヤンキースタジアム

 【ニューヨーク=木崎英夫通信員】フェンス際の美技が一転、失策になった。マリナーズ・イチロー外野手(36)が右翼への大飛球を1度は捕球。こぼれたボールを拾い損ねたプレーに失策がつく不運に見舞われた。試合後は、2本塁打を放った前日に続いて、独特の表現で右翼が狭いヤンキースタジアムを形容した。完敗したヤンキース戦で1安打を重ね、今季160安打。10年連続200安打に、残り38試合で40本となった。

 イチローにとって、この日ばかりはヤンキースタジアムの狭さが災いした。21日(同22日)、2打席連続本塁打を右中間へたたき込んだが、その狭さゆえに手痛い失策を犯した。5回1死一塁。2番スウィシャーが鋭く振り抜いた打球が低い弾道でフェンスめがけて飛んできた。右翼までは約96メートル。背後に迫る濃紺のフェンス直前でジャンプし1度は打球をグラブに収めた。しかし、無情にもボールはグラブのポケット部分から網の部分へ逃げ、結局は地面に落ちた。

 記録は安打だったが、今季3個目の失策は落ちたボールを拾い損ねたことに対して記録された。「でもここでやってるんだからしょうがないよね。捕りたいわね。グラブの中に入れてるしね」と悔しさをにじませた。連発した前日は「ふだん入らないのに入るのは特別だよ」と、右翼から右中間にかけて狭い独特の形状について評していた。しかし守備では一転するのがヤンキースタジアム。約99メートルのセーフコフィールドであれば難なく1死を取れたはず。このアンバランスさをこう形容した。

 イチロー

 ちょっと時代とズレてる感じがするかな、単純にサイズがね。今の日本の球場に藤井寺があるって感じかな。

 さらに、昨年破った日本通算3085安打の張本勲氏を引き合いに出した。「まぁ、張本さんでも守れる球場であることは間違いないですよ」。張本氏はお世辞にも守備がうまいとは言えなかったが、尊敬と愛情があるからこそ、「喝」覚悟の発言まで飛び出した。

 失策後にマ軍は4番カノの満塁弾で試合を決められた。途中、雨で57分中断。10点差の一方的な劣勢で3打席に凡退していたが、集中力を切らすことなく8回の最終打席で地面に着きそうな外角のカーブを拾い、左前に落とした。今季160安打。王者ヤンキースとの3連戦すべてに安打を放ち、今季最後の新「聖地」を後にした。