<マリナーズ5-4ヤンキース>◇28日(日本時間29日)◇セーフコフィールド

 【シアトル(米ワシントン州)=木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(37)が、今季初の1試合6打数無安打に終わった。チームは延長12回、ヤンキースの守護神リベラを攻略してサヨナラ勝ちを収め、ア・リーグ西地区単独2位に浮上した。上向きのチーム状態とは対照的にイチローの打撃は振るわず、5月の月間打率は3試合を残して2割1分3厘。月間打率の自己ワースト記録を更新することが確実となった。

 「ミスターメイ」と呼ばれるほど5月の打率が高いイチローが苦しんでいる。遊ゴロ、二ゴロ、遊ゴロ、左飛、左飛、遊ゴロの6打数無安打。強敵ヤンキース相手に今季13度目の逆転勝利を収めた戦いに打撃では貢献できなかった。

 内角球を左へと運ぶスライスを利かせた打球や、外角低めの難しい球を遊撃へと転がし、内野安打を狙う持ち味のスイングは見せている。しかし、最近10試合では強い打球が見られなくなった。好調時は真正面であっても、火を噴くような強烈なゴロが二塁手をめがけて地をはっていた。そんな打球が最近になってめっきりと減っている。

 「いつも強い打球を打ちたいと思っている」。これまでに幾度となく口をついた言葉を思えば、やはり、今は何かが微妙にズレ始めているのではないか。今季も全試合に出場中で、昨年より5試合多かった4月の疲れが出始めているのかもしれない。

 過去には背筋を伸ばすことで自然とバットのヘッドが一塁側ベンチ方向に向くフォームや、打席での立ち位置をベースから離すことで、安打量産へと結び付けることに成功している。昨季は構えた際に投手に対して右腰のひねり方を微調整し、レッドソックス松坂が「イチローさんの右のお尻の向きが違う」とポツリと漏らしたことがあった。

 5月の残りは3試合。「ミスターメイ」が、メジャー11年目で最低の月間打率になることは確実だが、希代のヒットメーカーは模索というプロセスを踏み、必ずや再浮上するはずだ。