<オープン戦:ダイヤモンドバックス1-7マリナーズ>◇10日(日本時間11日)◇アリゾナ州スコッツデール

 仙台市出身のダイヤモンドバックス斎藤隆投手(42)が、被災地への思いを新たにマウンドに立った。マリナーズ戦の4回表、1球目を投げる直前、斎藤は数秒、黙とうをささげた。祈りに込めたのは、「言葉ではなく、思いです」。

 1年前、東日本大震災の一報を耳にした夜は、寝る間もなく、一向に連絡がつかない仙台の家族や親戚の安否確認に追われた。時差もあり、野球どころではなかった。一時帰国も検討したが、両親の「隆は野球をやってくれればいい」のひと言で、練習続行を決めた。

 8カ月後の昨年11月、帰省した際、家族や友人からあらためて被災時の状況を伝え聞き、言葉を失った。「すべての方、すべてのケースで違う。スポーツと社会的、国の問題でリンクさせるのは難しい。(言葉で)言えば言うほど、きれい事になってしまいます」。

 その一方で、野球人としての役割も忘れていない。「期待してくれる方がいることも理解しています。何かのキッカケ、励みになるのであれば、1球、1回のマウンドで精いっぱいやっていきたいです」。日米通算21年目の大ベテランは、故郷東北への祈りを胸に、今後も投げ続けるとの気持ちを新たにした。(スコッツデール=四竈衛)