<ワールドシリーズ:カージナルス2-4レッドソックス>◇27日(日本時間28日)◇第4戦◇ブッシュスタジアム

 レッドソックス上原浩治投手(38)が、けん制で試合を締め、ワールドシリーズでは日本人初となるセーブを挙げた。逆転して4-2で迎えた9回裏に登板し、2死一塁から素早いけん制で一塁走者を刺してゲームセット。走塁妨害でサヨナラ負けした前夜に続き、けん制死での試合が終了もポストシーズン史上初となった。これで対戦成績は2勝2敗のタイになった。

 球場内だけでなく、上原自身も、結末は予想していなかった。2点リードの9回裏2死一塁。本塁打だけは避けたい場面で、2番ベルトランに対し、上原の感性は、ひと呼吸「間」を入れるべきだと訴えた。「ずっと同じリズムで投げていたんでね」。小気味良いテンポは上原の持ち味だが、一定化し過ぎると、打者のタイミングが合ってくる。そんな危険察知能力が、次のプレーを生んだ。

 3球目のモーションに入ろうとした瞬間、素早い動きで体をターンして一塁へけん制球を投げた。離塁しようとしていた俊足の一塁走者ウォンは、逆を突かれてタッチアウト。一瞬にして試合が終わり、超満員の敵地ファンのため息がグラウンドに充満した。

 一塁手ナポリが「こんなことはめったにない。とても俊敏な動きだった」と言えば、コーチ陣と守備隊形について話し合っていたファレル監督は「会話中に試合が終わっていた」と決定的瞬間を見逃した。もっとも、上原にすれば、狙ったわけではない。「そんなの、まったくランナーは見えてないですから」。巨人時代、ゴールデングラブ賞2回の実績がある上原にとっても、「記憶にはない」というエンディングで、日本人初のWシリーズでのセーブが記録された。

 24時間前は、三塁手の走塁妨害でサヨナラ負け。上原をはじめレ軍ナイン全員が言葉を失うような幕切れだった。だが、ショックを引きずるような性格ではない。「いろいろ考えたって返ってこない。終わったことをゴチャゴチャ言っても仕方ないですから」。結果がどうであれ、1日ごとに気持ちをリセットできる精神力があるからこそ、世界一を争うマウンドに立つ権利をつかみ取れた。

 その一方で、グラウンド上では、喜怒哀楽を包み隠すことはしない。シーズン中、無失点に抑えてダッグアウトへ戻るたびに恒例となった激しい「High

 Five(ハイタッチ)」は、地元ボストンでも大好評となり、今や上原の代名詞になったほど。それだけ気持ちを込めて投げてきた裏返しだった。セーブや勝利の試合後、主砲オルティスの肩に担ぎ上げられるなど、これまでにいないタイプの感情豊かな日本人選手として、米国ファンにも受け入れられた。

 「セーブとか、どうでもいいんです。チームが勝てばいいんです」。個人記録に興味はなくても、ウイニングボールだけは、ちゃっかり手に入れた。欲しいのは、あと2個のボール。身命をかけてきた上原の闘いが、いよいよ最終章を迎える。【四竃衛】