もう、心配無用だ。右肘の不調などに苦しんだ中日吉見一起投手(30)が、復活のノロシを上げた。韓国・LGとの練習試合に先発し、2回を2安打無失点。昨年7月以来となる試合でさすがの貫禄を見せた。この日は他にも山井、大野の開幕投手候補が一斉に登板。そのなかでも背番号19の存在感は際立っていた。

 吉見は本当に大丈夫なのか…? そんな疑問を吹き飛ばすような“今季初登板”だった。1イニング目を3者凡退に抑える順調な立ち上がり。2イニング目には先頭に右前打を許すなど2本のヒットを浴びたが、最後は2死二塁から7番打者を低めに落ちる132キロフォークで狙い通りの空振り三振。走者を背負っても落ち着き払った姿は、まさにエースの風格だ。

 マウンドを降りた吉見はフーッと息を吐き出した。「まずは無事に投げ終えることができて良かった。今のところは楽しく。頭で描いていることを表現できている」。この日はスコアラーのスピードガンで最速142キロを計測。詳細は明かさなかったが「キャンプで試している球種を2球投げられた」と新球も打者に試した。7カ月ぶりの対外試合は充実の内容だった。

 これまでの宣言通り2年ぶり4度目の開幕投手を狙う。この日は山井、大野の候補者が次々とマウンドに上がった。「人は人なので意識はしていない」と話すが「2人は去年実績があるけど僕は何もしていない。あえて口に出して狙うと言っている。そこを目指して調整したい」ときっぱり。開幕は1カ月後の3・27阪神戦(京セラドーム大阪)。誰よりもその日を意識しているのが吉見だ。

 3投手を同じ試合のマウンドに送り込んだ谷繁兼任監督は開幕投手のフレーズに苦笑いだった。火花散る争いを見届けて「これからじゃないですか? これから何試合か投げてからですよ」と決断の時期はまだ先とした。昨季は3月上旬に開幕投手・川上が決まった。「去年は去年。まだ分かりません」と首を振ったが、仮に指名された場合には十分に期待に応えられる。吉見の投球には熱い思いがあふれ出ていた。【桝井聡】

 ◆吉見の昨季 13年6月の右肘内側側副靱帯(じんたい)再建手術の影響から、キャンプは2軍スタート。7月8日ヤクルト戦(神宮)で1軍復帰を果たしたが、その後も右肘の不調などで状態は上がらず、同23日DeNA戦を最後に2軍落ち。結局、3試合で0勝1敗、防御率4・20だった。