満塁男が復活だ! フォロースルーの大きな、ロッテ大松尚逸内野手(32)らしいスイングだった。中日戦に「6番指名打者」で先発出場し、1回1死満塁で右翼席にアーチ。過去6本の満塁本塁打を放った男は今季、背水の陣で臨んでおり「好調の要因は危機感です。立場上、結果を出し続けるしかないので」と、険しい表情を崩さなかった。

 ここ数年は迷いがあった。「よし、これだっていうのがなかった」と自分の打撃を見失っていた。だが今季は「ある程度、自分を信用して、これでダメだったらしょうがない、っていうぐらいの気持ちで準備してきた」と吹っ切った。崖っぷちにいるという自覚が、満塁男を目覚めさせた。

 06年のプロ初本塁打も満塁弾だった。12年には春のキャンプに臨時コーチとして来ていた駒田徳広氏から、満塁で打つ極意を伝授された。歴代4位の13本の満塁弾を放った師匠の「力んで浅くなりがちのトップをしっかりとるように」という金言が、この日の力みのないスイングにもつながった。

 休日に行くパチンコでは、大当たりする確率の高い、激アツの赤い保留玉予告をよく外す。ツキに恵まれている方ではない。だが、本業の野球では違う。満塁での勝負強さを身にまとい、強烈な予告を感じさせる打者として復活したい。【竹内智信】

 ◆満塁男の大松 公式戦通算6本の満塁本塁打は葛城隆雄、堀幸一と並ぶ球団最多。06年4月15日西武戦で西口から放ったプロ初アーチが逆転満塁弾。08年7月4日ソフトバンク戦では、三瀬から10球粘って代打満塁弾。11年6月11日広島戦での1発は、パ・リーグ通算1000本目の満塁本塁打。満塁での通算成績は84打数28安打(打率3割3分3厘)、6本塁打、77打点。