広島復帰で注目の黒田博樹投手(40)が2月28日、ファンやチームメートが見守る中で実戦形式の打撃練習に登板した。「バットを折る」と宣言した新井貴浩内野手(38)に1発を浴びたものの、両サイドを巧みに使う投球術で打者12人を手玉に取った。沖縄キャンプ最後の登板で投じた46球で、順調な仕上がりを印象づけた。

 新井のバットを折るどころか、左翼席へ豪快な1発を食らった。それでも実戦形式2度目の登板となった黒田は、全球種投じた46球に確かな手ごたえをつかんだ。

 マウンド上の背番号15に600人のファンから大きな拍手と歓声が注がれ、練習中の投手陣もケージ裏に集結した。いきなり梵英心内野手(34)と天谷宗一郎外野手(31)のバットをへし折って打ち取ると、大きな拍手が起こった。2巡目には、前日いじった新井に内角ツーシームを左翼席に運ばれながら、次の対戦では追い込んでから外角のボールからストライクとなるツーシームで見逃し三振。「思った通り、完璧な球」と自賛の配球は、米大リーグで培った技だった。

 スプリットを解禁し、カットボールやツーシームの左右の変化球を両サイドに投げ分けた。全ての球種を低めに集めた。投球テンポを良くするため、ツーシームと真っすぐのサインを統一させた。バッテリーを組んだ石原は「捕るのも大変。切れがあるから。捕りづらいということは、打者も打ちづらいということ」と言った。名護での練習試合よりも黒田の偵察を優先させたヤクルト衣川スコアラーは「一段と球が切れていた。球が重たそう。みなさんがうちに投げると報道するのでもう1回見ておきたかった」と開幕カードで対戦する可能性の高い右腕への警戒をさらに高めた。

 打者12人に安打性2本、1四球。「実戦に近づき、いい球も増えてきた。開幕に向けて自分になりに合わせていける。徐々に上げていければと思う」。順調な調整ぶりに舌も滑らか。「収穫は、新井からいい球が来ていましたよと言われたこと」。事実でない冗談を言えるほど、沖縄最後の登板で不安はなくなった。8年ぶりの日本開幕へ、視界は良好だ。【前原淳】