黒田道を突き進む。広島福井優也投手(27)が先輩の黒田博樹投手(40)から自身と重ね合わせてアドバイスをもらった。制球難から成績が振るわなかった右腕は今季、3年ぶりに開幕ローテーションの座をつかんだ。新たなステージに上がろうとする福井にとっても、8年ぶり復帰の大黒柱が最高のお手本となる。

 表情からも落ち着きと自信が感じられる。3年ぶりに開幕ローテを勝ち取った福井が黒田からありがたい教えを授かった。

 「昔の自分とダブる。カウントを悪くして真ん中に投げるくらいなら、有利なカウントで思い切り勝負した方がいい」

 米国で名をはせた右腕の言葉は、胸に深く突き刺さった。オープン戦で精密機械のような制球力を見せる黒田も、入団当初は制球難。入団3年間で12勝。初めて2桁勝利を記録したのはプロ5年目だった。黒田にとって、福井は過去の自分を見ているようだった。

 福井は1年目の11年に8勝を挙げながら、12年以降は制球難から勝ち星が伸びず、13年には中継ぎも経験した。キャッチボールから納得の球を投げられないといら立つ完璧主義の性格が、悪循環を招いた。

 それでも昨年から脱力投法に取り組み「自分で納得いかなくても、打者から見ると違うように感じることもある」と考え方を変えた。昨季終盤に4勝を挙げ手応えをつかみ、今年も安定した投球が光る。6日の中日戦では3回1安打無失点。12日の西武戦では失策絡みで2点を失いながら、5回を5安打2失点にまとめた。

 「調子が悪くても試合を作る投球を心掛けたい」。15日オリックス戦での黒田の投球はまさに理想型だ。本調子でない中、内外角を丁寧に突き6回2失点。勝利投手となった。「ストライク先行の投球、本塁打を打たれても顔や態度に出さないところは勉強になる」。

 黒田が初めて2桁勝利を挙げた年数と同じプロ5年目。今季は偶然にも登板日が近くなりそうだ。「まずは試合を作る投球をする。それが勝ちにつながって、自分の自信につなげていきたい」。福井が背番号15の背中を追って、「黒田道」を突き進もうとしている。【前原淳】