巨人菅野智之投手(25)が執念で2年連続の開幕戦勝利を手にした。5、7回と満塁のピンチを招きながらも我慢の投球を続け、7回で7安打を浴びつつも1失点に抑えた。開幕前には右肘の痛みを抱えていたが隠し通して乗り越え、この日も死球を受けたが痛みをこらえ、再三のピンチを意地でしのいだ。エースの力投で接戦を制し、V9時代以来となるリーグ4連覇に向けて好発進した。

 菅野の顔が、一気にぎらついた。5回、筒香の1発の後に3連打を浴び、無死満塁のピンチを招いた。新主将の坂本に「慎重になりすぎている」と声を掛けられた。「大胆にいこう」と腹をくくると、開幕勝利への執着心をむき出しにした。黒羽根には3連続直球と力で追い込み右飛。代打井手はこの日最速150キロで意識させ、最後はフォークで空振り三振。石川は変化球で投ゴロに仕留めた。「大量点を取られてもおかしくなかった。去年から成長した部分と思う」と自然にガッツポーズが出た。

 内心は不安もあった。オープン戦4試合で防御率5・79。2月28日のヤクルト戦では3回6安打3失点。昨秋から右肘の痛みと闘っていた。知らず知らずに患部をかばっていた。メカニックに細心の注意を払う菅野ですら、フォームに狂いが生じていた。

 決して「痛い」と口にせず「大丈夫」と貫いた。昨季はクライマックスシリーズを投げずに終戦。迷惑を掛けたくはない。悔しい思いもしたくない。執念で乗り越えると決めた。

 復調の契機にと首脳陣が配慮し、1日からジャイアンツ球場で11日間のミニキャンプを実施。体のケアをしながら遠投でフォームを修正した。「染みついたものを取り除くのはこんなに大変だと思いませんでした」。痛みと技術のずれを克服し、12日ソフトバンク戦で5回2失点。原監督は「あいつはギブアップしない。たいしたものだ」と執念を感じ、開幕戦を託した。

 マウンドでも痛みに負けなかった。2回に久保の投球を左上腕部に受けたが、心配する仲間を制してマウンドに君臨した。「力強い仲間がいると思って投げた。不安そうなそぶりはしちゃいけない。これからも勝ち続けないといけない。マウンドに立ち続けるのが目標」。昨季開幕戦、一塁側ベンチ上で声をからしてくれた祖父の原貢氏は、昨年5月に帰らぬ人となった。13日に墓参りをして臨んだ大一番で意地と執念を示し、4連覇への第1歩を刻んだ。【浜本卓也】

 ▼菅野が昨年に続いて勝利投手。巨人の開幕投手で2年連続勝利は93~96年斎藤雅(4年連続)以来、19年ぶり。他に36年秋、37年春沢村、55、56年別所、77、78年堀内がおり、菅野がチーム5人目。菅野の開幕投手は2度目で、初の開幕投手から2年連続勝利は球団史上初。