今秋のドラフト上位候補、仙台大の右腕エース熊原健人(4年=柴田)が修正能力を示して、チーム開幕戦を完封勝利で飾った。初回に制球に苦しんだ熊原は、2回以降はクイックモーションからの投球など、工夫して東北大を2安打に抑えて11三振を奪った。チームは先勝した。

 プロ8球団のスカウトが見守る中、ひと味違う熊原がマウンドにいた。初回に2四球を与えた。チーム開幕戦に「力んでフォームを乱した」。強風でグラウンドの土が何度も舞い上がる悪条件も加わっていた。2回。走者がいなくてもセットポジションの右腕は、左足を右足より引く、独特のオープンスタンスで投球するスタイルを変えたのだ。

 「風が強くて、横の動きをしない方がいいと思って」と熊原。元ロッテの坪井俊樹コーチ(28)のアドバイスもあり、左足と右足を平行にして投球した。体の軸を保つためだ。「バランスが良かったので」(熊原)と、クイックモーションからも投げた。3回に1つ与えた四球は、4回以降0で安定感が出た。終盤には通常の投球動作も交え、最速152キロを誇る速球は147キロを計測。フォークを封印し、スライダーと冬場に磨いたチェンジアップを決め球に11三振を奪った。安打は4回と9回に1本ずつ許しただけだった。

 森本吉謙監督(40)は「チームに勇気を与えなきゃいけないのがエース」と、立ち上がりの悪さに不満を示したが「よく修正してくれた」と話した。これまでの熊原ならリズムの悪いまま、投げ切ることが多かった。視察した楽天上岡スカウトマネジャーは「こういう状況(強風)で、こういう投球ができる。クイックにして投げたり、そこが成長かな」と評価した。

 「完封できたのが唯一の救い」と、エースは決して満足していない。立ち上がりの制球力を反省し「1球が命取りになる」と言った。とはいえ試合中に機転を利かし、昨秋に続く開幕戦完封勝利。「ニュー熊原」で、ドラフトイヤーが幕を開けた。【久野朗】